片頭痛は生理周期で悪化する?~「エストロゲン」と片頭痛、『アマージ』の先行投与
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回答:悪化することがある
女性ホルモン「エストロゲン」の血中濃度の変化は、片頭痛の原因の一つと考えられています。
そのため、「エストロゲン」の濃度変化が大きい生理周期には、片頭痛が起こりやすくなったり、片頭痛が悪化しやすくなる恐れがあります。
通常、片頭痛には『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』などの痛み止めは効きにくいですが、生理周期で悪化した片頭痛には効果的であるケースがあります。
また、生理周期が安定していて片頭痛の時期を確実に予測できる場合には、例外的に『アマージ(一般名:ナラトリプタン)』を予め飲んでおくといった対応をすることもあります。
このように、生理周期と片頭痛が関連している場合には、通常の片頭痛とは違う対応をすることがあります。一度、主治医と相談するようにしてください。
回答の根拠①:「エストロゲン」と片頭痛の関連性
生理周期に関連する片頭痛は、「エストロゲン」濃度が急激に低下する時期と一致することが知られています。
また、そういった時期に「エストロゲン」を投与すると、片頭痛が起こらなくなることが報告されています1)。
1) Neurology.22(4):355-35,(1972) PMID:5062827
このことから、生理周期の「エストロゲン」減少によって片頭痛を起こす、あるいは悪化するといった可能性があります。
回答の根拠②:「プロスタグランジン」が関与するケースも
生理周期で起こる片頭痛は、三叉神経の過剰興奮や「プロスタグランジン」の放出、マグネシウム濃度低下など、様々な要素が関連している可能性が示唆されています2)。
2) Headache.46(3):365-86,(2006) PMID:16618254
特に、「プロスタグランジン」が痛みに関与していることがあるため、『ロキソニン』などのNSAIDsでも効果が得られるケースがあります。
回答の根拠③:例外的な『アマージ』での片頭痛予防
「トリプタン製剤」は効果が長続きしないため、通常は片頭痛の予防には使えません。
しかし、生理周期が安定していれば、片頭痛の発生を確実に予測できるため、そうした場合に限り例外的に「トリプタン製剤」を予防目的で使用することがあります(保険適応外)。
このとき、月経の2~3日前から1週間程度の期間、「トリプタン製剤」を続けて服用します3)。
特に、『アマージ』は半減期が5.1時間と「トリプタン製剤」の中では最も長く、薬の効果が持続するため、予防的な先行投与に適しています4)。
3) Neurology.51(1):307-9,(1998) PMID:9674831
4) Headache.47(7):1037-49,(2007) PMID:17635595
ただし、こうした使い方は主治医の厳密な管理のもとで行う特別な治療方法です。
自己判断で飲んだり飲まなかったり、といった勝手な使い方をすると、薬を使う量・回数が増えて、「薬物乱用性頭痛」を起こす恐れがあるため、絶対に止めてください。
薬剤師としてのアドバイス:片頭痛が頻繁に起こる場合は、予防薬を使う
『アマージ』などの「トリプタン製剤」は、片頭痛によく効きます。しかし、そのために必要以上に薬を使ってしまう人が少なくありません。
1ヶ月に10回以上「トリプタン製剤」を使っているような場合などは、薬の使い過ぎが原因の「薬物乱用性頭痛」を起こす恐れがあります。
そのため、『ミグシス(一般名:ロメリジン)』や『トリプタノール(一般名:アミトリプチリン)』などの予防薬を使い、「トリプタン製剤」の使用回数を減らすことをお勧めします。
予防薬は値段も安く、頭痛が起こって「トリプタン製剤」を頻繁に使うよりも、身体的にも経済的にも負担を少なくすることができます。
片頭痛が頻繁に起こる場合には、一度主治医と予防薬についても相談するようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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