薬剤師国家試験も大学別出願数を公表へ
厚生労働省は、2015年の第100回薬剤師国家試験から大学別の出願者数を公表すると発表しました。なお、医師や歯科医師国家試験では既に大学別の出願者数は公表されています。
公表することにどんな意味が?
これまで、国家試験の「合格率」が高いことを”売り”にしてきた大学がありました。そうした高い合格率は、受験者に対して非常に強い宣伝材料になります。 ところが、この「合格率」はいくらでも操作できてしまいます。国家試験に合格しそうにない学生は卒業試験で留年させ、国家試験を受けさせません。そうすれば合格しそうな学生だけが受験することになるので、見せかけの「合格率」は高くなります。
今回から「出願者数」が公表されます。これによって、出願しておきながら受験しなかった人数も明らかになります。これによって、その大学がどれだけの学生を国家試験を受けさせなかったのか?ということもわかるようになります。
合格率にどんな意味が?
例えば東京大学や京都大学の合格率はあまり高くありません。これは卒業後に研究者などの薬剤師免許を使わない職業につく学生も多いからです。およそ入学時の偏差値が高い”名門”と呼ばれる大学では、合格率よりも他にアピールするところがあるので、大した宣伝材料にしません。しかしそんな大学ばかりではありません。周りの大学と何かで差をつけようとしたとき、この「合格率」は国家試験に対する教育カリキュラムの優秀さを示す1つの指標として大きな意味を持ってきます。そのため、見せかけの「合格率」を高く維持するためにあの手この手で操作をするのです。
今回からの出願者数の公表は、こうした合格率操作に対する1つの抑止策となるでしょう。
大学は国家試験予備校ではない
そもそも、大学は国家資格を取得するためだけのものではありません。薬学部も薬剤師国家試験を取得するのはもちろん、科学者としての素養や医療従事者としての心構えなど、学ぶことはたくさんあるはずです。 今回の公表によって見せかけの合格率だけが高い、ということはなくなるでしょうが、その分、カリキュラムがより『薬剤師国家試験対策』だけのものに偏っていく恐れはあるのではないかと思います。
元より6年制になることにどんな意味があったのか議論が続いているいま、カリキュラムに「基礎・化学」なんてものが大々的に入ってきてしまうと、いったい何のための大学なのかと言わざるを得ません。
この記事へのコメントはありません。