結局、「ジェネリック」ってオススメなの?
記事の内容
回答:勧めたい理由、勧めたくない理由の両方がある
「時と場合によります」というのが本音です。
医療従事者の中でもジェネリック医薬品に対しては賛否両論、好き嫌いも含めて様々な意見があります。
■勧めたい理由~ジェネリック医薬品のメリット
値段が安い
付加価値がある(味や飲みやすさ)
■勧めたくない理由~ジェネリック医薬品のデメリット
安全性・有効性に不確かな要素
安さ追求での扱いにくさ
安定しない流通
勧めたい理由①:値段が安い
「ジェネリック医薬品」の最大の利点は、値段が安いことです。
安い薬で、本当に同じ効果が得られるのか?という不安は常に付きまといます。
しかし、『ワーファリン(一般名:ワルファリン)』や抗てんかん薬など、調節の難しい薬であっても、「ジェネリック医薬品」に変えても治療効果には影響しなかったとする報告があります1,2)。
1) Pharmacotherapy.31(4):386-93,(2011) PMID:21449627
2) Ann Pharmacother.45(11):1406-15,(2011) PMID:22028417
つまり、統計学的に見れば効果が同じことは保証されています。「同じ効き目なら、安い薬を選ぶ」、これに勝る理屈は何もありません。
勧めたい理由②:付加価値がある
「ジェネリック医薬品」の中には、「薬を飲む人」や「薬を扱う人」の声が活かされているものがあります。
飲みやすいように工夫されている例
高血圧の薬『ブロプレス(一般名:カンデサルタン)』は、普通の錠剤タイプのものしかありません。
一方、「ジェネリック医薬品」である『カンデサルタンOD錠「EE」』は、水なしでも飲めるOD錠になっています。
また、同じく高血圧の薬『アムロジン(一般名:アムロジピン)』にはOD錠も販売されていますが、「ジェネリック医薬品」である『アムロジピン内用ゼリー「TYK」』は、ゼリー剤になっています。
OD錠に特有の香り・風味が苦手な人でも服用できるようになっています。
先発品には無いmgの錠剤がある例
抗精神病薬の『セロクエル(一般名:クエチアピン)』は、25mg、100mg、200mgの3種が販売されています。
一方、「ジェネリック医薬品」である『クエチアピン錠「アメル」』には、12.5mg錠も販売されています。
12.5mg刻みで用量調節する場合、先発品であれば半分に割る必要がありますが、「ジェネリック医薬品」であれば錠剤のままで使うことができます。
薬の名前やmgがそのまま印字されていている例
錠剤には、PTPシートから取り出してしまっても何の薬かわかるように、表面に刻印・印字がされています。
認知症治療薬の『アリセプト(一般名:ドネペジル)』の錠剤には、「250」という印字がされています。
一方、「ジェネリック医薬品」である『ドネペジルOD錠「DSEP」』には、例えば10mg錠であれば「ドネペジルOD10 DSEP」と、そのまま印字されています。
『アリセプト』は一包化を行う機会も多い薬です。記号や番号ではなく薬の名前やmg数がそのまま印字されている薬は、入退院の際などにも確認作業が非常に簡単です。
飲む薬の量を減らせるもの
抗生物質である『サワシリン(一般名:アモキシシリン)』の細粒は、10%です。
一方、「ジェネリック医薬品」である『ワイドシリン(一般名:アモキシシリン)』の細粒は20%です。
つまり、「ジェネリック医薬品」の細粒は倍の濃さになっています。そのため、同じ量の薬が処方されても、飲む粉薬の量は半分で済みます。
添加物が変更されているもの
緑内障の点眼薬『キサラタン(一般名:ラタノプロスト)』には、防腐剤として「塩化ベンザルコニウム」が使われています。
この「塩化ベンザルコニウム」は、コンタクトレンズに吸着してしまったり、稀にアレルギー症状を起こす人が居たりと、人によっては問題になることがあります。
一方、「ジェネリック医薬品」である『ラタノプロストRF点眼液「日点」』には、「塩化ベンザルコニウム」が使われていません。
また、冷所ではなく室温保存できるという点でも非常に扱いやすくなっています。
新薬には、「一日も早く患者の元へ届く」という使命があります。飲みやすさや使いやすさといったことを事細かにこだわっている場合ではありません。
そういった意味で、現場の声を反映した工夫は「ジェネリック医薬品」に期待するところが大きいと言えます。
勧めたくない理由①:有効性・安全性に不確かな要素
「効果が同じ」という表現がそもそも、統計学的なものであって、自分にとっても100%必ず同じであることを保証するという意味ではありません。
薬を使う際には、紙面上のデータからだけではわからない影響も考える必要があります。
例えば、不味い薬です。
当然、不味い薬は患者にとっても飲みたいものではありません。そのため、自然と服用が疎かになる傾向があります。
その結果、データ上は効果が同じでも、実際には効果が不安定になってくる、といったことが起こり得ます。
更に外用剤などでは、後発品を使うと混合によって安定性が低下するものもあります。
また、点眼液などでは容器の違いによって1滴の量や雑菌などの入りにくさなどが変わってくることもあります。
勧めたくない理由②:安さ追求での扱いにくさ
湿けやすい、箱がヘナヘナでつぶれやすい、錠剤のシートが綺麗に切り取れない、切り取ったシートが尖っていて怪我をしやすい、シートから錠剤が取り出しにくい・・・等々、安さを追求した結果、扱いやすさという点で先発品に劣ってしまう薬があります。
こういった「ジェネリック医薬品」は、いくら安く提供できるとは言え、あまり取り扱いたくないというのが本音です。
例えば、武田薬品工業の薬は、シートの折り目で切り離した際、角が尖らないように工夫されています(下図:『タケプロン(一般名:ランソプラゾール)』)。
こういった細やかな工夫がされている先発医薬品を安易に「ジェネリック医薬品」に変更すると、何かと不便になってしまうことがあります。
勧めたくない理由③:安定しない流通
「ジェネリック医薬品」は、流通量が安定していないことがよくあります。
そのため、卸業者の取り扱い量も少なく、取り寄せに日数がかかることがあります。こうした場合、数円の節約のために個別の配送をお願いしなければならないこともあり、決して経済的とは言えません。
また、採算がとれないとして、薬価改正のタイミングで突然販売が中止になるといったケースもあります。
先発医薬品ではこうした事態は起こらないため、安定した流通という点からジェネリック医薬品への変更を躊躇することは多々あります。
薬剤師としてのアドバイス:食べ物の国産・外国産を選ぶのと同じ
「ジェネリック医薬品」を選ぶときの基準は、少々高くても国産の食材を使うのか、あるいは信頼できる範囲で外国産の食材を使うのか、という感覚と同じで良いと思います。
いつも同じものを選ぶ人も居ますが、作る料理や振る舞う相手によって変えることもあるでしょう。ジェネリック医薬品もそれと同じ感覚で気軽に選んでもらえれば良いと思います。
自分が使う胃薬や痛み止めなんかは「ジェネリック医薬品」でも良いけれど、子どもが使う塗り薬や、両親が使う不整脈の薬など大切なものは先発品が良い・・・そんな自分に合った賢い選択をしてもらえるように、いつでも薬剤師に相談してもらえればと思います。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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