薬剤師の活躍は何故見えて来ないのか?~プレアボイドの考え方
「薬剤師の仕事は見えない」とよく言われます。そのため薬剤師は「薬局の中で、医者の言う通り薬を袋に詰めているだけのお仕事」だとも揶揄されています。確かに、自発的に何か積極的な対外活動を行っている薬剤師が非常に少ないのは事実です。しかし、だからと言って薬剤師の仕事を「袋に詰めているだけ」と表現するのは、少し問題があります。
プレアボイドとは
薬剤師の重要な仕事として最近提唱されているものに「プレアボイド」という考え方があります。「プレアボイド」とは、prevent and avoid the adverse drug deactions(薬による有害事象を防止・回避する)という言葉を基にした造語です。薬による有害事象を未然に防ぎ、薬本来の効果を十分に引き出すために、薬剤師としての専門知識を活かしていく活動のことです。
提唱されたのは最近ですが、昔から薬剤師はこの「プレアボイド」を常に行ないながら仕事をしています。
疑義照会5%の意義
この「プレアボイド」は外からほとんど見えません。 例えば、医師が一緒に使ってはいけない2つの薬を処方箋に書いてきたとします。それを薬剤師が医師に「疑義照会」し、一緒に使える薬に変更になったとします。
このとき、薬剤師はわざわざ「私が見つけたから良かったものの、そのまま薬を飲んでいたら大変なことになっていましたね」とは、当たり前ですが言いません。
厚生労働省の調べによると、全国で「疑義紹介」が行われている処方箋の割合は約5%程度であるとされています。これはつまり、20人に1人の割合で何かしらのトラブルが起こり得る可能性があったものの、それを薬剤師が防いでいる、と解釈することもできます。
実際には、疑義照会をするまでもなく、薬の飲み方に間違いがあったものを訂正したり、市販薬との飲み合わせを注意したりといった活動は日々行っています。
実際、薬の有害事象を回避できた時でも、本人には「回避できた」という感覚はないので、あまり実感がないのかもしれません。そのくらい薬を信頼してもらえていることは、良いことです。
「何やってるんだ?」と言われている方が、役立てている
恐らく、全国の薬剤師が地道に頑張っているからこそ、ニュース番組などで大きな副作用が取り沙汰されないのだと思います。今、「薬剤師って薬を袋に詰めるだけの仕事だね」と言われているのは、ある意味、薬剤師がしっかりと仕事をしていることの裏返しとも言えるでしょう。「薬剤師が居なくては、薬なんか怖くて使えない!」という世の中は、薬剤師としても嬉しいものではありません。
しかし、そういった考えのもとで長年仕事をしてきた結果、本当に「何をやっているのかわからない」と思われているもの事実です。実際、きちんと仕事をしているのだから、どういった活動で国民の健康に貢献しているのか、それをもっと対外的にアピールする必要があると思っています。
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