『ザイザル』と『アレグラ』、同じ抗ヒスタミン薬の違いは?~効果と眠気の強さ
記事の内容
回答:強力な『ザイザル』、眠くなりにくい『アレグラ』
『ザイザル(一般名:レボセチリジン)』と『アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)』は、どちらもアレルギーの治療に使う、同じ「抗ヒスタミン薬」です。
効き目が強力なのは『ザイザル』、眠くなりにくいのは『アレグラ』です。
どちらも副作用の少ない「第二世代の抗ヒスタミン薬」で、明確な使い分けの基準はありません。
しかし、症状が酷い人や眠気の副作用が気にならない人は『ザイザル』を、症状が軽い人や仕事・学業の面から眠くなっては困る人は『アレグラ』を使うのが一般的です。
また、『ザイザル』は1日1回、『アレグラ』は1日2回で使う薬のため、服用の手間によって選ぶこともあります。
1つの薬で良くならない場合、例外的に『ザイザル』と『アレグラ』を併用する場合もあります。
回答の根拠①:『ザイザル』の優れた治療効果
『ザイザル』は、『アレグラ』よりもアレルギー症状を抑える効果が強力です1)。
※皮膚のアレルギー症状(腫れ・赤み)を抑える効果
『ザイザル』5mg(通常の1日量) > 『アレグラ』180mg(通常の1日量の1.5倍)
※花粉症の鼻炎症状を抑える効果
『ザイザル』5mg(通常の1日量) > 『アレグラ』120mg(通常の1日量)
1) ザイザル錠 インタビューフォーム
『ザイザル』は食事の影響も受けない
『ザイザル』は食前でも食後でも効果に影響がありません1)。そのため、食事の時間を気にする必要がありません。
一方『アレグラ』は、食事や「グレープフルーツジュース」の飲用で吸収が低下してしまうことがあります2,3)。
※AUC(血中濃度-時間曲線下面積)と食事の影響
ザイザル:影響なし
アレグラ:食後では15%低下
2) アレグラ錠 添付文書
3) Clin Pharmacol Ther.71(1):11-20,(2002) PMID:11823753
このことから、『ザイザル』は「個人差」が生じるリスクも少なく、安定して高い効果を得られる薬と言えます。
回答の根拠②:『アレグラ』の眠気の少なさと、労働生産性への影響
『ザイザル』と『アレグラ』はどちらも眠くなりにくい「第二世代の抗ヒスタミン薬」ですが、中でも『アレグラ』は特に眠気の少ない薬です。
※副作用の頻度 1,2)
ザイザル:眠気2.6%、倦怠感0.2%、口渇0.2%
アレグラ:眠気0.5%、倦怠感0.1%
こうした眠気の副作用は、薬が皮膚や鼻だけでなく、脳のヒスタミン受容体にも作用してしまうことで起こりますが、『アレグラ』は脳への移行が非常に少ないことが特徴です4,5)。
※脳内ヒスタミン受容体占有率 4,5)
『アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)』・・・ 3%未満
『アレジオン(一般名:エピナスチン)』・・・・・ 7%
『ザイザル(一般名:レボセチリジン)』・・・・・ 8%
『エバステル(一般名:エバスチン)』・・・・・・10%
『クラリチン(一般名:ロラタジン)』・・・・・・11%
『アレロック(一般名:オロパタジン)』・・・・・13%
『ジルテック(一般名:セチリジン)』・・・・・・15%
『ザジテン(一般名:ケトチフェン)』・・・・・・75%
4) Expert Opin Drug Saf.14(2):199-206,(2015) PMID:25466429
5) Pharmacol Ther.113(1):1-15,(2007) PMID:16890992
また眠気を感じなくとも、無自覚のうちに集中力や判断力が低下してしまう(インペアード・パフォーマンス)ことがあります。そのため、多くの「抗ヒスタミン薬」では薬を飲んだ後、自動車運転など危険な作業をすることは避けるよう、注意喚起されています。
しかし、『アレグラ』はこうした集中力や判断力への影響も少ないため、注意喚起はされていません2)。
※注意喚起の無い抗ヒスタミン薬には、『アレグラ』の他に『クラリチン(一般名:ロラタジン)』、新薬の『デザレックス(一般名:デスロラタジン)』・『ビラノア(一般名:ビラスチン)』があります。
『アレグラ』は労働生産性を下げない
せっかく薬でアレルギーの症状を抑えても、薬の副作用で集中力や判断力が落ち、結局のところ労働生産性は変わらない、といった事態が起こることもあります。
『アレグラ』であれば、こういった本末転倒な事態を避けることも可能です6)。
6) Allergol Int.59(4):345-54,(2010) PMID:20864795
薬剤師としてのアドバイス①:効き目・眠気の感じ方には個人差が大きい
『ザイザル』や『アレグラ』などの「抗ヒスタミン薬」の目的は、くしゃみや鼻水、痒みといった不快な症状を抑え、生活を快適にしたり、仕事の効率を良くしたりすることです。
せっかく薬を飲んでアレルギー症状を抑えても、眠くなって生活や仕事に支障が出てしまっては、本末転倒です。
しかし、「抗ヒスタミン薬」の効果副作用の感じ方には個人差も大きいため、実際に飲んで試してみなければわからないところがあります。そのため、数ある「抗ヒスタミン薬」の中から、良く効いて眠くならない、自分に合った薬を見つけることが重要です。
薬の効き具合や眠気の感じ方は、できるだけ具体的に医師・薬剤師に伝え、自分に合った薬を見つけられるようにしてください。
薬剤師としてのアドバイス②:鼻づまりが酷い時は、「抗ロイコトリエン薬」が必要
同じアレルギーでも、鼻づまりや喘息には「ヒスタミン」ではなく「ロイコトリエン」が関与しています。
そのため、鼻づまりの症状が酷い場合には『ザイザル』や『アレグラ』のような「抗ヒスタミン薬」ではなく、『シングレア(一般名:モンテルカスト)』などの「抗ロイコトリエン薬」を使う必要があります。
正しい診断・処方をしてもらうために、医師に症状を伝えるときは「花粉症が辛い」のように漠然と伝えるのではなく、「くしゃみが酷い」、「鼻づまりが辛い」といったようにできるだけ具体的に伝えることをお勧めします。
ポイントのまとめ
1. 『ザイザル』は『アレグラ』より強力で、食事の影響も受けない
2. 『アレグラ』は眠くなりにくく、自動車運転に対する制限もない
3. 鼻づまりが酷い場合は、「抗ヒスタミン薬」ではなく「抗ロイコトリエン薬」が必要
添付文書・インタビューフォーム記載事項の比較
◆適応症
ザイザル:アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚そう痒症
アレグラ:アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎)に伴うそう痒
◆用法
ザイザル:成人は1日1回、小児は1日2回
アレグラ:1日2回
◆子どもへの使用
ザイザル:シロップは6ヶ月以上から使用可
アレグラ:ドライシロップは6ヶ月以上から使用可
◆眠気の副作用(市販後の使用成績調査時)
ザイザル:2.6%
アレグラ:0.5%
◆自動車運転に対する注意喚起
ザイザル:従事させないこと
アレグラ:なし
◆効果発現までにかかる時間
ザイザル:1時間
アレグラ:1時間
◆剤型
ザイザル:錠(5mg)、シロップ
アレグラ:錠(30mg、60mg)、OD錠(60mg)、ドライシロップ
◆製造販売元
ザイザル:グラクソ・スミスクライン
アレグラ:サノフィ
+αの情報:『ザイザル』と『アレグラ』を併用する例外的なケース
1種類の「抗ヒスタミン薬」で十分に効果を得られない場合、別の「抗ヒスタミン薬」を追加・併用することも選択肢とされています7)。
7) 日本皮膚科学会 「蕁麻疹診療ガイドライン」(2011)
ただし、こうした使い方はあくまで例外的なもので、保険適用外になることに注意が必要です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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