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抗ヒスタミン薬 似た薬の違い

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『ザイザル』と『アレグラ』、同じ抗ヒスタミン薬の違いは?~効果と眠気の強さ

回答:効果が強めの『ザイザル』、眠くなりにくい『アレグラ』

 『ザイザル(一般名:レボセチリジン)』『アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)』は、どちらもアレルギーの治療に使う抗ヒスタミン薬です。

 効き目が強めなのは『ザイザル』、眠くなりにくいのは『アレグラ』です。

 どちらも眠くなりにくい”第二世代(非鎮静性)”の抗ヒスタミン薬で、明確な使い分けの基準はありませんが、症状がひどい人は『ザイザル』、眠くなると困る人は『アレグラ』が適しています。
 また、『アレグラ』には腎機能や肝機能が低下している高齢者でも使いやすい、という長所があります。

 

回答の根拠①:「レボセチリジン」の強めな効果

 眠くなりにくい”第二世代(非鎮静性)”の抗ヒスタミン薬は、どれも効果に大きな違いはなく、ガイドライン等でもひとまとめで扱われています。しかし、その中でも「レボセチリジン」の効果はやや強め1,2)とされています。

 1) ザイザル錠 インタビューフォーム
 2) Allergol Int.62(2):215-22,(2013) PMID:23524648
 3) Braz J Otorhinolaryngol.89(4):101272,(2023) PMID:37271114

 

「レボセチリジン」は食事の影響も受けない

 抗ヒスタミン薬の中には、「フェキソフェナジン」のように食事や「果実ジュース」の飲用で吸収が低下し、効果が弱まってしまうものがあります4,5)。しかし、「レボセチリジン」は食前でも食後でも影響はなく1)、食事の時間や内容を気にする必要がありません。

AUC(血中濃度-時間曲線下面積)と食事の影響
レボセチリジン:影響なし
フェキソフェナジン:食後では15%低下

 4) アレグラ錠 
インタビューフォーム
 5) Clin Pharmacol Ther.71(1):11-20,(2002) PMID:11823753

 このことから、「レボセチリジン」は生活状況による「個人差」が生じるリスクも少なく、安定して高い効果を得られる薬と言えます。

回答の根拠②:「フェキソフェナジン」の眠気の少なさ

 「レボセチリジン」と「フェキソフェナジン」は、どちらも眠くなりにくい非鎮静性の抗ヒスタミン薬ですが、中でも特に「フェキソフェナジン」は脳のヒスタミン受容体への作用が非常に小さく、眠気リスクが小さいのが特徴です。

※脳内ヒスタミン受容体占有率 6,7,8,9)

分類商品名一般名占有率(目安)
非鎮静性アレグラフェキソフェナジン3%未満
ビラノアビラスチン3%未満
デザレックスデスロラタジン6%
ザイザルレボセチリジン8%
アレジオンエピナスチン9%
エバステルエバスチン10%
ジルテックセチリジン12%
クラリチンロラタジン13%
アレロックオロパタジン15%
タリオンベポタスチン15%
軽度鎮静性ゼスランメキタジン22%
鎮静性ポララミンクロルフェニラミン50%
レスタミンコーワジフェンヒドラミン55%
ザジテンケトチフェン78%

 6) Pharmacol Ther.113(1):1-15,(2007) PMID:16890992
 7) Br J Clin Pharmacol.78(5):970-80,(2014) PMID:24833043
 8) Expert Opin Drug Saf.14(2):199-206,(2015) PMID:25466429
 9) Pharmacol Res Perspect.7(4):e00499,(2019) PMID:31338198

 

「フェキソフェナジン」は服用後の自動車運転に制限がない

 眠気を自覚していなくても、集中力や判断力が低下している(インペアード・パフォーマンス)ことがあるため、多くの抗ヒスタミン薬では、薬を飲んだ後に自動車運転等の危険な作業に従事することは禁止されています1)。
 しかし、「フェキソフェナジン」はこうした集中力や判断力への影響がほとんどない10,11)ため、自動車運転だけでなく、航空業務への従事も制限されていません。

※服用後でも航空業務に従事できる抗ヒスタミン薬 12)
『アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)
『クラリチン(一般名:ロラタジン)』
『デザレックス(一般名:デスロラタジン)』
『ビラノア(一般名:ビラスチン)』

 10) Br J Clin Pharmacol.48(2):200-6,(1999) PMID:10417497
 11) J Family Med Prim Care.11(10):5909-5917,(2022) PMID:36618177

 12) 国空航第327号 「航空機乗組員の使用する医薬品の取扱いに関する指針(令和元年6月17日一部改正)」

回答の根拠③:腎機能や肝機能が低下した人にとっての安全性

 腎機能や肝機能の低下した人が薬を使うと、必要以上に薬の血中濃度が高くなったり、薬が体に長時間残ったりして、思わぬ副作用を起こすことがあります。「レボセチリジン」もそういったリスクのある薬で、腎機能や肝機能に応じて薬の量を調節する必要があります1,13)。
 一方で「フェキソフェナジン」はもともと副作用の少ない薬で、通常の15倍量(1,800mg)でも特に健康被害は起こらず、30倍量(3,600mg)でも”めまい”や”口の乾き”程度の副作用しか現れない、とされています4)。このことから、腎機能や肝機能が低下していて薬の血中濃度が多少高くなったところで、あまり大きな副作用の問題にはつながりにくいと考えられています4)。

 つまり、「フェキソフェナジン」は、腎機能や肝機能に問題のある高齢者に対しても使いやすい抗ヒスタミン薬と言えます。

※腎機能が低下している人でも、通常量で使用できる抗ヒスタミン薬
『アレジオン(一般名:エピナスチン)』
『エバステル(一般名:エバスチン)』
『クラリチン(一般名:ロラタジン)』
『アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)』

 13) 日本腎臓病薬物療法学会「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧

 

薬剤師としてのアドバイス①:花粉症に対する効果は「ステロイドの点鼻薬」が最も高い

 「レボセチリジン」は、確かに抗ヒスタミン薬の中では”やや強力な薬”と言えます。しかし、たとえば花粉症治療においては、どの抗ヒスタミン薬よりも「ステロイドの点鼻薬」の方が遥かに効果的です14)。
 そのため、もし”効果”を重視するのであれば、抗ヒスタミン薬の中での優劣を気にするよりも、「ステロイドの点鼻薬」を選んだ方が合理的です。

 14) J Allergy Clin Immunol Pract.12(12):3404-3418,(2024) PMID:39251016

薬剤師としてのアドバイス②:効き目・眠気の感じ方には個人差が大きい

 「レボセチリジン」や「フェキソフェナジン」などの抗ヒスタミン薬の目的は、くしゃみや鼻水、痒みといった不快な症状を抑え、生活を快適にしたり、仕事の効率を良くしたりすることです。
 せっかく薬を飲んでアレルギー症状を抑えても、眠くなって生活や仕事に支障が出てしまっては、本末転倒です。

 抗ヒスタミン薬の効果や副作用の感じ方には個人差も大きいため、実際に飲んで試してみなければわからないところがあります。抗ヒスタミン薬は10種類以上あるため、その中から自分に合った薬を見つけられるよう、医師・薬剤師としっかりコミュニケーションをとることが重要です。

ポイントのまとめ

1. 『ザイザル(レボセチリジン)』は効果が強めで、食事の影響も受けにくい
2. 『アレグラ(フェキソフェナジン)』は眠くなりにくく、自動車運転に対する制限もない
3. 『アレグラ(フェキソフェナジン)』は、腎機能や肝機能が低下した人でも使いやすい

 

添付文書・インタビューフォーム記載事項の比較

◆有効成分
ザイザル:レボセチリジン
アレグラ:フェキソフェナジン

◆適応症
ザイザル:アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、痒疹、皮膚そう痒症
アレグラ:アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎)に伴うそう痒

◆用法
ザイザル:成人は1日1回、小児は1日2回
アレグラ:1日2回

◆子どもへの使用
ザイザル:シロップが6ヶ月から使用可
アレグラ:30mg錠が7歳から使用可

◆眠気の副作用(市販後の使用成績調査時)
ザイザル:2.6%
アレグラ:0.5%

◆自動車運転に対する注意喚起
ザイザル:従事させないこと
アレグラ:なし

◆腎機能が低下している場合
ザイザル:高い血中濃度が持続する恐れ
アレグラ:忍容性は良好(血中濃度は上昇する)

◆肝機能が低下している場合
ザイザル:高い血中濃度が持続する恐れ
アレグラ:忍容性は良好(血中濃度は変動する)

◆効果発現までにかかる時間
ザイザル:1時間
アレグラ:1時間

◆剤型
ザイザル:錠(5mg)、シロップ
アレグラ:錠(30mg、60mg)

◆製造販売元
ザイザル:グラクソ・スミスクライン
アレグラ:サノフィ

◆同成分のOTC医薬品
ザイザル:(販売されていない)
アレグラ:『アレグラFX』、『アレグラFXジュニア』

 

 

+αの情報①:抗ヒスタミン薬を併用する例外的なケース

 1種類の「抗ヒスタミン薬」で十分に効果を得られない場合、別の「抗ヒスタミン薬」を追加・併用することもあります15)。ただし、副作用で眠気や鎮静はより強く現れると考えられるため、他に良い選択肢がない場合の例外的な対応です。

 15) 日本皮膚科学会 「蕁麻疹診療ガイドライン」(2018)

+αの情報②:抗ヒスタミン薬では、鼻詰まりはあまり解消できない

 同じアレルギーでも、鼻づまりには「ヒスタミン」ではなく「ロイコトリエン」が大きく関与しています。そのため、「レボセチリジン」や「フェキソフェナジン」といった抗ヒスタミン薬は、鼻詰まりの症状にはあまり効果的ではありません。

 鼻詰まりの症状がひどい場合には『シングレア(一般名:モンテルカスト)』などの「抗ロイコトリエン薬」「ステロイドの点鼻薬」を使うのが一般的です16,17)。

 16) Drugs.80(17):1831-1851,(2020) PMID:32915441
 17) 鼻アレルギー診療ガイドライン2024

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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