「レビー小体型認知症」は、「アルツハイマー型認知症」と何が違うの?~見分ける3つのポイント
記事の内容
回答:初期症状が違うため、「レビー小体型」は見落としやすい
「レビー小体型認知症」と「アルツハイマー型認知症」は、どちらも病的に「認知機能」が衰えていく脳の病気です。
どちらであっても使うべき薬は『アリセプト(一般名:ドネペジル)』等の認知症治療薬であって、特にこの二つの厳密な鑑別にこだわる必要はありません。
しかし、初期症状や特徴的な症状に違いがあり、特に「レビー小体型認知症」の初期症状は見落とされやすく、別の疾患と診断されてしまう恐れもあります。
早期発見・早期治療のために、2つの疾患の特徴を理解し、どういった症状を医師に伝えるべきかを知っておきましょう。
①初期症状の違い
アルツハイマー型:記憶障害
レビー小体型:幻視
②睡眠障害の違い
アルツハイマー型:睡眠リズムの乱れ
レビー小体型:悪夢を見る
③身体的な症状(パーキンソン症状)
アルツハイマー型:ほとんどない
レビー小体型:初期から多い
①初期症状の違い:記憶障害か、幻視か
「アルツハイマー型認知症」は一般的に、「記憶障害」から始まります。
自分で印鑑や預金通帳を収納したという記憶が欠落して「お金を盗られた!」と騒ぐ、食事をしたという記憶が欠落して「ご飯はまだか!」と怒る、などの症状が現れます。
一方、「レビー小体型認知症」では、高頻度で初期に「幻視」が現れます。
「部屋の中に知らない人が居る」、「花瓶からヘビが出てくる」、「壁が燃えている」といったような訴えをするのが特徴です。
初期の「レビー小体型認知症」では「記憶障害」が軽い傾向があります。そのため、「認知症=記憶障害」という認識でいると、見落とされてしまう恐れがあります。
②睡眠障害の違い:睡眠リズムの乱れか、悪夢を見るか
「アルツハイマー型認知症」では一般的に、寝つきが悪くなる「入眠障害」や、夜中に目が覚める「中途覚醒」が起こります。
そのため、睡眠のリズムが乱れて昼夜逆転してしまい、深夜に徘徊するといったような行動につながってしまうといったことが起こります。
一方、「レビー小体型認知症」では「悪夢」を見る傾向があります。
そのため、夢の中で化け物に襲われて抵抗したりすると、実際に隣に寝ている人間を叩いたり、横にある家具を破壊したりすることにつながります。また、眠りながら叫び声をあげることもあります。
こうした症状を「レム睡眠行動障害」と呼びますが、本人の自覚症状には乏しいため、周りの人間が先に気付くことが多い症状です。
③身体的な症状の違い:パーキンソン症状の有無
パーキンソン症状とは、「パーキンソン病」と似た症状が起こることです。具体的には、
①動作が緩慢になる
②まばたきが減り無表情になる(仮面性顔貌)
③前屈みの小股で歩く
といった症状が挙げられます。
こういった症状は「アルツハイマー型認知症」ではほとんど現れませんが、「レビー小体型認知症」では比較的初期から現れます。
これらパーキンソン症状に対してはパーキンソン病の治療薬を使うことで改善できる場合もあります。
薬剤師としてのアドバイス:誤診や病気の進行を防ぐために
先述の通り、認知症が「アルツハイマー型」か「レビー小体型」か、の鑑別にこだわる必要はそれほどありません。
気を付けなければならないのは、「レビー小体型認知症」が別の疾患と誤診されてしまうことによって、認知症の治療開始が遅れ、また不適切な薬を処方されてしまうことです。
特に、精神病系の疾患と診断されて薬を処方された場合、副作用によってパーキンソン症状が更に悪化する可能性も考えられます。
こうした事態を防ぐためにも、「幻視」や「レム睡眠行動障害」、「パーキンソン症状」の3点については気を付けて観察し、受診時には家族や周りの人間が医師へ伝えるようにしましょう。
+αの情報:治療方法は同じ
アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症は、診断が下ったあとの治療方法は基本的に同じです。
現在のところ、保険適用があるのは『アリセプト』だけです1)。しかし、『メマリー(一般名:メマンチン)』による効果も報告されている2)ため、いずれは保険適用に追加される可能性もあります。
1) アリセプト錠 添付文書
2) 老年精神医学雑誌.23(9):1079-82,(2012)
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
この記事へのコメントはありません。