アセトアミノフェンとお酒(アルコール)は相性悪い?~NAPQIの肝毒性
記事の内容
回答:薬もお酒も、普通の量であれば気にする必要はない
解熱鎮痛薬の「アセトアミノフェン」を、お酒(アルコール)と一緒に飲むと、肝臓に負担がかかる恐れがあります。
特に、「アセトアミノフェン」を多めに(1日に1,500mg以上)使っていたり、日常的に大量のお酒(1日に日本酒2合以上)を飲んでいる人は、定期的に肝機能を検査するなど、注意しておく必要があります。
ただし、薬もお酒も、これより少ない普通の量であれば気にする必要はありません。
回答の根拠①:日常的&大量の飲酒で起こる、酵素「CYP2E1」の誘導
アルコールを「日常的」かつ「大量」に摂取する人は、その大量のアルコールを分解処理できるように身体が適応していきます。具体的には、肝臓で特別な酵素「CYP2E1」が増えます。
この特別な酵素「CYP2E1」は、「アセトアミノフェン」を通常の代謝・分解とは異なる「NAPQI(N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン)」に変える性質があります。この「NAPQI」が肝臓に蓄積すると、肝障害や肝不全を起こす恐れがあります1)。
1) カロナール錠 インタビューフォーム
回答の根拠②:1,500mg以上の「アセトアミノフェン」は注意する
肝毒性のある「NAPQI」は、お酒を飲んでいなくとも少量は常に作られています。しかし、肝臓に貯蔵されている「グルタチオン」によってすぐに解毒・分解処理されてしまうため、蓄積することはありません。
ところが、「アセトアミノフェン」を大量に摂取した場合、肝臓に貯蔵された「グルタチオン」が枯渇してしまい、「NAPQI」が蓄積してしまう可能性があります1)。
「アセトアミノフェン」は痛み止めとして1日最大4,000mgまで使うことができますが、こうした肝臓への負担から、1日量が1,500mgを超える場合には定期的に肝機能を検査するよう注意喚起されています2)。
2) カロナール錠 添付文書
市販薬にも注意
「アセトアミノフェン」はインフルエンザの時にも使えたり、子どもや妊婦でも使えるなど非常に使いやすい解熱鎮痛薬です。
そのため、市販の風邪薬や痛み止めなど様々な薬に配合されています。気付かないうちに総量が1,500mgを超えてしまわないよう、注意してください。
こうした副作用のリスクを考慮し、アメリカのFDAでは薬の1規格あたり「アセトアミノフェン」の量を325mgまでに制限しています3)。
3) Acetaminophen Prescription Combination Drug Products with more than 325 mg: FDA Statement – Recommendation to Discontinue Prescribing and Dispensing. ※PubMed外
回答の根拠③:適度なアルコール量の目安とは
「大量」の飲酒がどのくらいのアルコール量なのか、具体的な数値は特に示されていません。
一般的に、1日20~40gのアルコール量(日本酒に換算すると1~2合程度のお酒)は「適量」で、健康に良いとされています4)。
4) 厚生労働省 健康日本21「アルコール」節度ある適度な飲酒
このことから、問題となるような「日常的」かつ「大量」の飲酒とは、毎日欠かさず日本酒2合以上を大きく超えるような量を飲んでいるような場合、と考えることができます。
普通の人が晩酌を楽しむような量、たまに飲み会でたくさん飲む程度であれば、特に神経質になる必要はありません。
薬剤師としてのアドバイス:薬剤師は、この相互作用をわざわざ説明しない
「アセトアミノフェン」とお酒の相互作用を起こす恐れがある人は、以下の条件に当て嵌まる人です。
1.「日常的」に、適量を上回る「大量」の飲酒をしている人
2.「アセトアミノフェン」を、1日に1,500mg以上使っている人
通常、この条件にはほとんどの人が該当しないため、薬剤師もこの相互作用について、敢えて詳しく説明することもありません。これは、薬のデメリットを隠しているのではなく、不必要な不安を煽るメリットが無いからです。
ただし、「アセトアミノフェン」が必要な状態・・・つまり熱や痛みがある時にはお酒そのものも控えた方が良いため、飲酒を控えるような指導を行うこともあります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
この記事へのコメントはありません。