「アポトーシス」と「ネクローシス」の違いは?
回答:周りに悪影響を及ぼすかどうか
「アポトーシス(apoptosis)」と「ネクローシス(necrosis)」は、どちらも細胞死を意味します。「アポトーシス」では、細胞内にある酵素などをきちんと事前に処理してから細胞死するため、周りに影響することはありません。
「ネクローシス」では、事前処理することなく細胞死を起こすため、酵素や核酸などが細胞外に流出し、周りの細胞に炎症などの悪影響を及ぼします。
アポトーシス:立つ鳥跡を濁さず
「アポトーシス」は、生物としてプログラムされた通りの秩序立った活動です。 例えば人間の手の指が5本になる過程は、まずしゃもじのような手を形成した後、指と指の間の細胞が「アポトーシス」で消えていくことで、指となっていきます。
あるいは、オタマジャクシからカエルになる時、尻尾の細胞は「アポトーシス」で消えていきます。
「アポトーシス」が起こると、まず細胞のサイズを縮小し、隣り合う細胞から離れます。
次に、重要な遺伝情報を含む染色体をシュレッダーのように断片化させます。
そして、細胞膜を維持し、酵素などの内容物が流出しない状態を保った状態で、最後はマクロファージ等の貪食細胞によって処理されます。
『ドキソルビシン(一般名:アドリアマイシン)』や『エクザール(一般名:ビンブラスチン)』といった抗癌剤のように、この「アポトーシス」を巧く誘導することによって効果を発揮する薬もあります。
ネクローシス、あとは野となれ山となれ
「ネクローシス」は外的要因によって起こる、不測の事態です。「アポトーシス」のように細胞内の物質を処理する余裕も、細胞膜を維持して内容物の流出を防ぐ余裕もありません。
そのため、強力な酵素が周りに流出し、周囲の細胞をも巻き込んでトラブルを起こし、炎症などの被害が起こります。
例えば、心筋梗塞では冠血管が完全に閉塞してしまうため、そこから先の心臓組織は酸素不足に陥り、壊死を起こしてしまいます。
この時に起こる壊死がネクローシスに該当します(狭心症と心筋梗塞の違い)。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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