ドパミン不足が原因であるパーキンソン病に、ドパミン遮断薬『ナウゼリン』を使うのは何故?
記事の内容
回答:「レボドパ」の副作用軽減と、吸収効率改善のため
『ナウゼリン(一般名:ドンペリドン)』は脳へ移行しにくい性質があるため、パーキンソン病治療薬の「レボドパ」製剤で起こる吐き気・食欲不振といった副作用の軽減や、「レボドパ」の吸収効率を高める目的で使われることがあります。
パーキンソン病はドパミン不足が原因で起こるため、そこにドパミン遮断薬の『ナウゼリン』を使うのは、一見すると病状を悪化させてしまうように思われますが、脳に移行しにくい『ナウゼリン』はパーキンソン病患者の胃腸症状に対する良い選択肢になります。
回答の根拠①:脳に到達しない『ナウゼリン』は、パーキンソン病の病態に関与しない
『ドパゾール(一般名:レボドパ)』など、パーキンソン病の治療に使う「レボドパ」製剤の大きな弱点として、悪心・嘔吐(49.1%)や食欲不振(22.4%)といった副作用が非常に起こりやすい1)、という点が挙げられます。
『ナウゼリン』はドパミンを遮断し減少させる作用を持っていますが、血液脳関門の透過性が低く、脳には到達しにくい薬である2)ことから、パーキンソン病の病状を悪化させるリスクが少なく3)、パーキンソン病患者の消化器症状を改善させる薬として広く使われています4)。
1) ドパゾール錠 添付文書
2) ナウゼリン錠 インタビューフォーム
3) 日本神経学会 「パーキンソン病治療ガイドライン (2018)」
4) Curr Drug Saf.8(1):63-8,(2013) PMID:23656449
回答の根拠②:「no on現象」・「delayed on現象」の改善
「レボドパ」製剤は腸管からの吸収率が非常に悪いため、得られる効果にムラが生じてしまうことがあります。こうした吸収の悪さは、パーキンソン病治療でよく問題となる「no on現象」や「delayed on現象」の原因にもなります。
※no on現象・・・・・・「レボドパ」製剤の効果が現れないこと
※delayed on現象・・・「レボドパ」製剤の効果発現に時間がかかること
こうしたトラブルの解消には、消化管運動を改善する『ナウゼリン』や『ガスモチン(一般名:モサプリド)』の使用が、ガイドラインでも選択肢に挙げられています3)。
薬剤師としてのアドバイス:服用方法を工夫することもあるが、必ず相談の上で
パーキンソン病の治療では、「レボドパ」製剤の効果を安定させ、副作用を軽減することが大きなテーマです。このとき、「レボドパ」の吸収効率を良くすることは、効果を安定化させるために重要な要素になります。
『ナウゼリン』を併用することでも吸収効率を改善することができますが、他にも空腹時服用に切り替えたり、薬を懸濁液にして服用したり、レモン水で服用したりといった工夫でも、吸収効率を改善することができます。
ただし、こうした工夫が適切かどうかは、その人の症状や服薬状況などによって異なります。自己判断で服用方法を変えると薬の吸収が変わり、治療効果に悪影響を与えることもありますので、必ず医師・薬剤師に相談した上で行ってください。
+αの情報:1日30mg以上の『ナウゼリン』は心毒性に注意
『ナウゼリン』は、パーキンソン病患者の消化器症状に対するゴールドスタンダードともされていますが、1日30mgを超えた量での使用は心筋梗塞や不整脈のリスクを高めることが指摘されています4,5)。そのため、用量をオーバーして使用することには注意は必要です。
5) Drug Saf.33(11):1003-14,(2010) PMID:20925438
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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