「パーキンソン病」と「パーキンソン症候群」は何が違うの?
回答:ドパミンが不足する原因が違う
「パーキンソン病」と「パーキンソン症候群」は、どちらも脳の「ドパミン」が不足することによって起こります。この2つは、「ドパミン不足」がどういった原因で生じているかによって区別します。「パーキンソン病」は、脳の中脳黒質にある「ドパミン神経細胞」が、何らかの影響によって変性・脱落した結果、線条体で「ドパミン不足」が起こる疾患のことです。
「パーキンソン症候群」は、脳血管障害や薬の副作用などが原因で「ドパミン不足」が起こる症状のことです。
どちらも共通した「ドパミン不足」によって、運動障害などの非常に良く似た症状が現れます。
詳しい回答:ドパミン不足で運動障害が起こる理由
人間の運動は、「ドパミン」と「アセチルコリン」によって調節されています。このとき、「ドパミン」が不足すると「アセチルコリン」が過剰となり、正しく機能しなくなります。そのため、「パーキンソン病」に対しては、不足している「ドパミン」を補充する「レボドパ」製剤やドパミン受容体刺激薬を使う、あるいは過剰になった「アセチルコリン」をブロックする抗コリン薬を使う、といった薬物治療を行います。
「パーキンソン症候群」も、「ドパミン」不足という病態は同じですので、同じ薬を使うことがあります。
※「パーキンソン病」と「パーキンソン症候群」の両方に適応のある薬 1,2)
『ドパゾール(一般名:レボドパ)』
『ネオドパストン(一般名:レボドパ + カルビドパ)』
1) ドパゾール錠 添付文書
2) ネオドパストン配合錠 添付文書
一方、薬の副作用で起きた「パーキンソン症候群」は、原因薬を中止することでも改善することがあります。
薬剤師としてのアドバイス①:薬を増やすべきか、減らすべきか
原因が同じ「ドパミン不足」で起こる症状でも、「パーキンソン病」と「パーキンソン症候群」では対処が全く異なる場合があります。「パーキンソン病」であれば薬を使って治療するのが一般的ですが、薬が原因で起こった「パーキンソン症候群」であれば原因薬物を減らす、もしくは中止する必要があります。
見た目の症状に惑わされず、原因を明確に特定するのが治療の第一歩です。
薬剤師としてのアドバイス②:パーキンソン病は、不知の病というわけではない
「パーキンソン病」は、未だに原因不明で根本的治療の方法が見つかっておらず、症状によっては難病指定される疾患であるため、不治の病という印象を持たれがちです。しかし、現在では効果の高い治療薬が豊富に揃っており、適切な治療を行えば発症から5年間、病気を感じることなく生活することすら可能です。
直接生命に関わる病気ではないものの、全身の筋肉をうまく動かせなくなるため生活の質(QOL)は著しく低下します。早めに適切な治療開始を行うことが大切です。
レビー小体型認知症で起こる「パーキンソン症状」
最近話題になっている「レビー小体型認知症」では「アルツハイマー型認知症」とは異なり、初期から「パーキンソン症状」が現れるのが特徴とされています。認知症=物忘れ、という認識のままでは「レビー小体型認知症」を見落とし、治療開始が遅れる恐れがあります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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