『ジェイゾロフト』や『レクサプロ』などのSSRIは、副作用で太る?~体重への影響と因果関係
記事の内容
回答:副作用の可能性もゼロではないが、ほとんどは別の要因
『ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)』や『レクサプロ(一般名:エスシタロプラム)』などのSSRIを飲んでいると、体重が増えることがあります。
この体重の増加は、確かに副作用である可能性もゼロではありません。しかし、薬を飲んで元気になって食事量が増えたことなど、別の要因によるものがほとんどです。
このことから、太るかもしれないから、と薬を敬遠することは全くお勧めできません。
回答の根拠①:SSRIと体重増加の因果関係
現在のところ、SSRIと体重増加の直接の因果関係を示した報告はありません。
そもそも、添付文書上に「体重増加」の副作用が記載されているのは、数あるSSRIのうち『パキシル(一般名:パロキセチン)』のみで、その頻度も0.2%とごく低いものです1)。
1) パキシル錠 添付文書
同様に『ジェイゾロフト』にも「体重増加」の事例が報告されていますが、同時に「体重減少」も報告されています。また、研究段階ではむしろ胎児の体重を「減らす」副作用が報告されています2)。
2) ジェイゾロフト錠 インタビューフォーム
これらのことから、SSRIが何かの薬理作用によって明らかに体重を増加させる、といったことは考えにくく、実際に体重が増えたのであれば何か別の原因を探る方が妥当です。
回答の根拠②:よく食べるようになるから、という研究報告
SSRI服用中の体重増加に関して、薬の副作用ではなく、薬による「うつ症状」の改善効果によるものとする報告があります。
この報告では、SSRIを服用することで「うつ症状」が改善し、食欲が戻り、食べる量が増えるために体重も増える、という因果関係に結論付けています3)。
3) J Clin Psychiatry.65(10):1365-71,(2004) PMID:15491240
ただし、うつ症状の改善は自覚できないことも多々あります。そのため、知らず知らずのうちに食べる量が増えているために体重が増え、これをSSRIの副作用ではないかと疑ってしまうケースが少なくありません。
薬剤師としてのアドバイス:体重増加は「回復の証」として受け取る
ただでさえ病気によって辛い状態の中、謎の体重増加が起こった場合、薬の副作用を疑って薬を敬遠したくなることに無理はありません。
しかし、先述の通り体重増加はSSRIの副作用を疑うよりも、薬が効いて食欲が回復してきた可能性を考える方が妥当です。
病気の性質上、こうした回復傾向に対して自覚がないことも多々ありますが、「実際に体重増加として現れるくらい、薬の効果があった」と受け取ることをお勧めします。
体重は元気になってから運動で落とすことも可能です。せっかく「効果があった」薬を中断してしまうことは、非常にもったいないことです。まずはきちんと薬を飲んで、しっかりと食事を摂って、元気になることを目標に治療を進めるようにしてください。
ただし、食事量は増えていないのに体重が増える、生活に支障が出るほど体重が増え続けている、どうしても体重が気になるといった場合には、主治医と薬について相談するようにしてください。絶対に、自己判断で薬を止めたりしないようにしてください。
+αの情報:食欲を増やす併用薬
SSRIと一緒によく使う薬で、『ドグマチール』や『ベタマック』、『ミラドール』といった「スルピリド」製剤には、食欲を増加させる作用があります4)。
4) ベタマック錠 添付文書
また、同じ抗うつ薬でも『リフレックス(一般名:ミルタザピン)』などのNaSSAには食欲を増加させる作用があります5)。
5) リフレックス錠 添付文書
SSRIの副作用と混同してしまうこともありますが、これらの薬を使っている場合には、明らかな体重増加が起こる場合があります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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