■サイト内検索


スポンサードリンク

妊娠、授乳 自己免疫疾患

/

自己免疫疾患はどうして女性に多いの?

回答:現段階での仮説

 はっきりとした原因は明らかになっていませんが、以下のような説があります。

①元々、女性の方が免疫システムが強く、自己免疫疾患に対しては不利に働く傾向がある。
②妊娠~出産をきっかけに発症することがある。
③染色体の違い

 確かに自己免疫疾患は、女性の方が発症率が高いことが知られています。実際、関節リウマチでは2倍、バセドウ病では4倍、全身性エリテマトーデスでは9倍・・・といったように、女性の方が男性に比べて2~10倍患者が多くなっています。

 そもそも、自己免疫疾患の発症メカニズムそのものが未だはっきりと解明されていないため、明確な理由も判明していません。

回答の根拠:①免疫システムの強さ

 もともと生物として、女性は母体として子どもを守るための防御能力、男性は狩猟や敵を排除するために戦うための攻撃能力に、それぞれ長けています。
 そのため、一般的に女性の方が防御能力である免疫システムが強い傾向にある、ということは広く認識されています。

 同年齢の男女を比較すると、確かに男性の方が風邪をひきやすい、感染症にかかりやすいといった傾向が存在します。
自己と非自己

 自己免疫疾患は、自分の細胞を、細菌やウイルスのように「非自己」と誤認してしまい、免疫システムが自分の細胞を攻撃することで起こります。もともと免疫システムが強い女性は、こうした誤認が起こった際、より強く自分の細胞を攻撃してしまうために、自己免疫疾患として発症しやすいことになります。

回答の根拠:②妊娠~出産のきっかけ

 妊娠は、母体にとっては胎児という「非自己」がお腹の中に存在している状態です。また、妊娠中は、胎盤を通して胎児の物質が母体にも入ってくることがあります。
 胎児は母体にとって「非自己」なのですが、胎児を攻撃してしまってはなりませんし、かと言って胎児由来の物質をなんでも「自己」として受け入れていては母体にも悪影響が出てしまいます。

 こうした複雑な状況が、母体の免疫システムを刺激し、何らかの不調をきたすということが可能性として考えられています。
妊娠、出産と自己免疫疾患

 ※妊娠・出産によって一時的な自己免疫疾患が起こるケースのイメージ図

回答の根拠:③染色体の違い

 「自己」と「非自己」の区別を教育するのは”胸腺”の働きによるものです。この胸腺で教育を受けたT細胞が、体内に入り込んだ「非自己」を認識して、免疫システムを指揮しています。

 男性の染色体は「XY」、女性の染色体は「XX」です。「自己」と「非自己」を教育する際には、X染色体にある情報を使うことになります。男性の場合、X染色体は1つだけなので、片方をそのまま使用します。女性の場合、X染色体が2つあるので、片方を不活化・・・いわば封印してから、もう片方を使用します。

 この不活化をした際に何らかのエラーが起きてしまうことで、本来は「自己」である細胞を「非自己」と誤認してしまうようなケースが起こり得るのではないか、と考えられています。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

■主な活動

【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます(2022年)
■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)
服薬指導がちょっとだけ上手になる本(2024年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
南山堂「薬局」、Medical Tribune
薬ゼミ、診断と治療社
ダイヤモンド・ドラッグストア
m3.com

 

【講演・シンポジウム等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

【監修・出演等】
異世界薬局(MFコミックス)
Yahoo!ニュース動画
フジテレビ / TBSラジオ
yomiDr./朝日新聞AERA/BuzzFeed/日経新聞/日経トレンディ/大元気/女性自身/女子SPA!ほか

 

 

利益相反(COI)
特定の製薬企業との利害関係、開示すべき利益相反関係にある製薬企業は一切ありません。

■ご意見・ご要望・仕事依頼などはこちらへ

■カテゴリ選択・サイト内検索

スポンサードリンク

■おすすめ記事

  1. 『モーラステープ』と『モーラスパップ』、同じ貼り薬の違いは?…
  2. 『ロキソニン』と『セレコックス』、同じ鎮痛薬の違いは?~速効…
  3. 『アドエア』と『シムビコート』、同じ喘息吸入薬の違いは?~デ…
  4. 『ラミシール』と『イトリゾール』、同じ内服の水虫薬の違いは?…
  5. 『ミラペックス』と『ペルマックス』、同じパーキンソン病治療薬…
  6. 『アラミスト』・『ナゾネックス』・『エリザス』、同じステロイ…
  7. 『ジスロマック』と『クラリス』、同じマクロライド系抗菌薬の違…

■お勧め書籍・ブログ

recommended
recommended

■提携・協力先リンク

オンライン病気事典メドレー

banner2-r

250×63

スポンサードリンク
PAGE TOP