自己免疫疾患はどうして女性に多いの?
回答:現段階での仮説
はっきりとした原因は明らかになっていませんが、以下のような説があります。①元々、女性の方が免疫システムが強く、自己免疫疾患に対しては不利に働く傾向がある。
②妊娠~出産をきっかけに発症することがある。
③染色体の違い
確かに自己免疫疾患は、女性の方が発症率が高いことが知られています。実際、関節リウマチでは2倍、バセドウ病では4倍、全身性エリテマトーデスでは9倍・・・といったように、女性の方が男性に比べて2~10倍患者が多くなっています。
そもそも、自己免疫疾患の発症メカニズムそのものが未だはっきりと解明されていないため、明確な理由も判明していません。
回答の根拠:①免疫システムの強さ
もともと生物として、女性は母体として子どもを守るための防御能力、男性は狩猟や敵を排除するために戦うための攻撃能力に、それぞれ長けています。そのため、一般的に女性の方が防御能力である免疫システムが強い傾向にある、ということは広く認識されています。
同年齢の男女を比較すると、確かに男性の方が風邪をひきやすい、感染症にかかりやすいといった傾向が存在します。
自己免疫疾患は、自分の細胞を、細菌やウイルスのように「非自己」と誤認してしまい、免疫システムが自分の細胞を攻撃することで起こります。もともと免疫システムが強い女性は、こうした誤認が起こった際、より強く自分の細胞を攻撃してしまうために、自己免疫疾患として発症しやすいことになります。
回答の根拠:②妊娠~出産のきっかけ
妊娠は、母体にとっては胎児という「非自己」がお腹の中に存在している状態です。また、妊娠中は、胎盤を通して胎児の物質が母体にも入ってくることがあります。胎児は母体にとって「非自己」なのですが、胎児を攻撃してしまってはなりませんし、かと言って胎児由来の物質をなんでも「自己」として受け入れていては母体にも悪影響が出てしまいます。
こうした複雑な状況が、母体の免疫システムを刺激し、何らかの不調をきたすということが可能性として考えられています。
※妊娠・出産によって一時的な自己免疫疾患が起こるケースのイメージ図
回答の根拠:③染色体の違い
「自己」と「非自己」の区別を教育するのは”胸腺”の働きによるものです。この胸腺で教育を受けたT細胞が、体内に入り込んだ「非自己」を認識して、免疫システムを指揮しています。男性の染色体は「XY」、女性の染色体は「XX」です。「自己」と「非自己」を教育する際には、X染色体にある情報を使うことになります。男性の場合、X染色体は1つだけなので、片方をそのまま使用します。女性の場合、X染色体が2つあるので、片方を不活化・・・いわば封印してから、もう片方を使用します。
この不活化をした際に何らかのエラーが起きてしまうことで、本来は「自己」である細胞を「非自己」と誤認してしまうようなケースが起こり得るのではないか、と考えられています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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