ステロイドの飲み薬を朝に飲む理由は?~コルチゾールの日内変動と不眠・副腎機能不全の副作用
記事の内容
回答:副作用を減らせるから
『プレドニン(一般名:プレドニゾロン)』や『リンデロン(一般名:ベタメタゾン)』などのステロイドの飲み薬は、朝に1日1回で飲んだり、朝に多めの量を飲むのが基本です。
これは、「ステロイド」が朝に増えて夜に減るという、ヒトの自然な増減リズム(日内変動)に合わせて使うことで、副作用を減らせるからです。
ただし、飲み忘れた場合には時間にこだわらず、1日量をきちんと飲むことを優先させるようにしてください。
回答の根拠:「コルチゾール」の自然な増減リズム~日内変動と不眠
そもそも「ステロイド」とは、身体に元から存在する「コルチゾール」というホルモンのことです。
この「コルチゾール」は、朝にたくさん分泌され、夕方~夜になってくると分泌が減る、という増減リズム(日内変動)をしています。
もし薬を夜1回で飲んだり、朝より夜に多い量を飲んだりすると、この自然なリズムが乱れます。こうした乱れは、夜に目が冴えて眠れなくなったり、「コルチゾール」を分泌している副腎に悪影響を与えたりといった副作用の原因になることがわかっています。
こうした副作用を避けるため、『プレドニン』などのステロイドは朝1回、あるいは朝に多めの量を服用する、といった方法がとられます1,2)。
1) 日内会誌.67(1):57-68,(1978) PMID:632638
2) 南江堂 「今日の治療薬 (2016)」
「フィードバック調節」と「副腎機能不全」
人間には、特定のホルモンの作用だけが強力になり過ぎないようにバランスを調節する、「フィードバック調節」というシステムが備わっています。
本来、夜には少なくなるはずの「コルチゾール」が薬によって増えると、身体はそれ以上「コルチゾール」の作用だけが強くならないよう、「フィードバック調節」をかけます。具体的には、「副腎」に「コルチゾール」の分泌を減らすよう働きかけます。
一度や二度の「フィードバック調節」が問題になることはありません。
しかし、あまりに運動しないと筋肉が弱っていくのと同じように、あまり長期に渡って「フィードバック調節」で「副腎」の分泌を減らし続けていると、「副腎」の機能そのものが弱っていきます。
こうして「副腎」の機能低下が大きくなっていった結果、「副腎機能不全」という副作用につながることがあります。
薬剤師としてのアドバイス①:飲み忘れた場合は、時間にこだわらない
1回や2回だけ夜に飲んだからといって急に副作用が増えるようなことはありません。むしろ、飲むのを忘れてしまうことで病状が悪化するリスクが大幅に高くなります。
そのため、ステロイドを飲み忘れた場合には、時間を変えてでも1日の量を変えずにきちんと飲むようにしてください。
特に、関節リウマチなどで厳密に薬を続けなければならない場合には、時間よりもその人の生活状況に合わせることを優先するのが一般的です。
薬剤師としてのアドバイス②:夜勤などで昼夜逆転している場合、増減リズムも逆になる
夜勤などで昼夜逆転している人は通常、身体の「コルチゾール」の量も逆転しています。そのため、一般的な飲み方が適切でない可能性があります。
生活リズムが特殊な場合には、どういった飲み方をすれば良いか個別に医師・薬剤師と相談するようにしてください。
+αの情報:飲み方を工夫しやすい『プレドニン』
ステロイドの飲み薬にも色々な種類がありますが、中でも『プレドニン』は作用時間が短過ぎず長過ぎず、適度な長さです。
そのため、朝1回で飲む、朝に多めの量を飲む、あるいは1日おきで飲むといった副作用を避けるための工夫をしやすい薬です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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