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非BZD系の睡眠薬

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『ベルソムラ』ってどんな薬?~脳の覚醒・睡眠と「オレキシン」

回答:「オレキシン受容体拮抗薬」~自然な眠りを誘う新しい睡眠薬

 『ベルソムラ(一般名:スボレキサント)』は、脳を覚醒させる「オレキシン」という神経伝達物質をブロックする「オレキシン受容体拮抗薬」です。
 「オレキシン」の作用をブロックすることで脳を「覚醒」から「睡眠」の状態へと移行させ、眠気を誘う効果があります。
ベルソムラとオレキシン

 『ベルソムラ』は、寝付きの悪い「入眠障害」と、途中で目が覚める「中途覚醒」の両方に効果があります。

 また、従来のベンゾジアゼピン系睡眠薬のように脳全体の活動を薬で抑えるわけではないため、脳の情報処理能力に与える影響も少ないという特徴があります。

回答の根拠①:「オレキシン」と睡眠の関係

 「オレキシン」は、脳の覚醒・睡眠を司る重要な神経伝達物質です。
 「オレキシン」が視床下部から放出されると、脳は覚醒を維持しますが、放出量が減ると脳は睡眠へと移行します1)。

 1) Pharmacol Rev.64(3):389-420,(2012) PMID:22759794

 『ベルソムラ』は、この「オレキシン」による覚醒をブロックすることで、脳を睡眠の状態に移行させます。

 また、日中に前触れなく突発的な睡眠状態に陥ってしまう「ナルコレプシー」では、この「オレキシン」の量が正常値の3分の1程度しかないことも報告されています2)。
 そのため、『ベルソムラ』とは逆の「オレキシン受容体」を刺激する薬は、覚醒を維持する作用で「ナルコレプシー」治療薬としての可能性が期待されています。
オレキシン受容体の刺激と遮断
 2) 日本睡眠学会 「ナルコレプシーの診断・診療ガイドライン」

回答の根拠②:入眠障害と中途覚醒の両方に効果

 『ベルソムラ』は、寝付きが悪い「入眠障害」と、途中で目が覚める「中途覚醒」の両方に効果があります3)。
ベルソムラ~入眠障害と中途覚醒

 3) ベルソムラ錠 インタビューフォーム

 そのため、これまでは「寝付きをよくする薬(例:短時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬)」と、「途中で目が覚めないようにする薬(例:中~長時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬)」のように、2種類の睡眠薬を使っていた人でも、『ベルソムラ』1つだけで両方の症状を解消できる可能性があります。

回答の根拠③:脳の情報処理能力への影響

 『ベルソムラ』は、服用から1.5時間程度で脳の情報処理能力が低下しますが、4時間後には元に戻ることが報告されています3)。
 このことから、就寝前に服用した薬の影響で、日中までぼんやりすることは少ないと言えます。

薬剤師としてのアドバイス①:食事とは時間間隔をあけて服用する

 『ベルソムラ』を食事の直後に服用すると、吸収が遅れる(Tmaxが1~1.5時間遅延)3)ため、薬が効き始めるのに時間が長くかかってしまうことになります。
 そのため、夕食からなるべく時間を空け、就寝の直前に服用する必要があります。

薬剤師としてのアドバイス②:まずは生活習慣の見直しから

 慢性的な不眠に対しては、睡眠薬よりも生活習慣の見直しなどの「認知行動療法」が効果を発揮する、という報告があります4)。

 4) Ann Intern Med.163(3):191-204,(2015) PMID:26054060

 現在使用されている睡眠薬では、ほとんど耐性や依存性が生じることはありませんが、使わなくても眠れるのであれば、敢えて使う必要はありません。

 睡眠薬を頼る前にまず、自身の睡眠に対する認識や、生活習慣を見直すことをお勧めします。
 特に就寝前、布団に入ってから長時間、スマートホン等の明るい液晶画面を見続けることが、不眠の大きなリスクとなっていることが示唆されています。

+αの情報:ロゼレム

 『ロゼレム(一般名:ラメルテオン)』も、「ベンゾジアゼピン系」と異なる作用で眠気を生みます。

 『ロゼレム』は、「メラトニン」という体内時計を調整するホルモンの働きを助け、その人の体内時計を「夜」に合わせることで、眠気を生みます。
 主に昼夜逆転の解消や、寝付きを良くする効果がありますが、睡眠時間全体の時間を延ばし、睡眠効率も良くなるという報告があります5)。

 5) ロゼレム錠 インタビューフォーム


 

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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