「24時間自由行動下血圧測定(ABPM)」とは
24時間自由行動下血圧測定(24 hour ambulatory blood pressure monitoring:ABPM)とは、24時間に渡って、ずっと血圧を測定し続け、その変動を記録していく方法です。
具体的には、まる1日、15~30分おきに血圧を測定していきます。そして、「いつ、どんな時に血圧が高くなるのか」といった特徴を見つけます。
記事の内容
そんなものが何故必要か?
血圧の測定と言えば、これまでは朝1回とか、診察室で1回、といったように、毎日決まった時間帯に1回(多くとも数回)測定するだけのものでした。こうして得られた血圧のデータを元に高血圧かどうかを診断し、降圧薬を選択してきました。
しかし人によっては、こうして得られた血圧のデータが「本当の姿」ではない場合があります。
特に、診察室での血圧と、家庭での血圧が大きく異なるような症例があり、こういった特殊な高血圧を見抜くこと、適切な治療を行うためには、ある時間の血圧の数字だけを見るのではなく、1日の血圧の変動を見渡す必要があります。
病院ではわからなかった高血圧①:白衣高血圧
病院の診察室でのみ血圧が高く、家ではなんともない、というタイプの人が居ます。一般に、医師や看護師の白衣を見ると緊張して血圧が上がってしまう「白衣高血圧」と呼ばれるタイプの高血圧です。
従来は、普段は血圧も高くないため大したリスクにもならない、とされてきましたが、些細な外的要因で血圧が簡単に上がってしまうという状態は、決して健康な状態とは言えません。
実際、血圧の変動が大きい人は、心筋梗塞や脳卒中などを起こしやすいということが報告されています1)。
1) Ann Intern Med.163(5):329-38,(2015) PMID:26215765
病院ではわからなかった高血圧②:仮面高血圧
逆に、病院では普通の血圧なのに、家では血圧が高い、というタイプの人が居ます。一般に、病院では「高血圧」と見つけにくい、「仮面高血圧」と呼ばれるようなタイプです。
実際には高血圧である時間が長いにも関わらず、病院で「高血圧」と診断されず、治療が行われない、という事態になります。
病院ではわからなかった高血圧③:早朝高血圧
近年、「早朝高血圧:Morning surge」と呼ばれるタイプの「高血圧」が問題視されています。これは、朝起きた瞬間にだけ、一時的に血圧が急上昇するタイプの症状です。
他の高血圧症とは別に、朝に目覚めて交感神経が活発になる時に、必要以上に血管収縮が起こることが原因とされています。高血圧になるタイミングが、朝起きた瞬間だけなので、病院ではなかなか見つけることができません。
冬の寒い朝、起きてすぐにトイレに立って脳卒中を起こす、といった突然死は昔から頻繁に起こってきましたが、この「早朝高血圧」であった可能性も高いと推察されています。
こういった「早朝高血圧」には、ARBやACE阻害薬など高血圧治療の標準薬に加え、交感神経の過剰な興奮を抑えるα遮断薬を使うなど、通常の高血圧とは治療方法も変わってきます。
その人の血圧の変動に合わせた、薬の使い方を
「早朝高血圧」の傾向が強い場合には、血圧の上がりやすい冬場には、寝る前に降圧薬を追加で飲んでおく、といったような工夫を加えることで、より治療効果を高めることができます。
このように、その人の血圧の変動に合わせた薬の選択を行うことが、非常に大事になってきています。その際、正しい選択をするために、まずその人の血圧変動にどんな特徴があるのか?を調べるのが、この「24時間自由行動下血圧測定」です。
また、「高血圧治療ガイドライン2014」では、”24時間に渡って降圧効果を持続させることが重要”とされ、本来は1日1回の服用で良い『オルメテック(一般名:オルメサルタン)』や『ブロプレス(一般名:カンデサルタン)』などのARBについて、1日2回で服用する選択肢が言及されています。
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