どうして「ピロリ菌」は除菌しないといけないの?~潰瘍の再発率と、除菌を勧める理由
記事の内容
回答:胃潰瘍や十二指腸潰瘍を繰り返すことになるから
「ピロリ菌」に感染していると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍になるリスクが非常に高くなります。
また、胃薬で症状を抑えたとしても、「ピロリ菌」が居る限り何度も胃潰瘍や十二指腸潰瘍を繰り返すことになります。
「ピロリ菌」の除菌に成功すれば、こうした繰り返す胃潰瘍や十二指腸潰瘍を減らし、胃薬なしで生活できる可能性すらあります。
回答の根拠:除菌すれば胃薬が必要なくなる
胃潰瘍の60~80%、十二指腸潰瘍の90~95%は、「ピロリ菌」の感染が原因とされています1)。
1) 今日の治療薬2016 南江堂
「ピロリ菌」の除菌によってこうした潰瘍の再発率は大幅に改善し、除菌後は薬無しでも再発率は10%未満にまで低下します。
一方、「ピロリ菌」に感染している限り、PPIやH2ブロッカーによる維持療法を行っていても20%程度の再発があります。薬を飲まなかった場合には、60~90%という高い頻度で再発します2,3)。
2) Cochrane Database Syst Rev.(4):CD003840,(2004) PMID:15495066
3) Helicobacter.9(1):9-16,(2004) PMID:15156899
一度、きちんと除菌してしまえば、改めて感染しない限り潰瘍の再発も抑えられます。再発に怯えながらずっと胃薬を飲み続けるよりも、一度しっかり除菌してしまう、という方がお勧めです。
除菌の薬は最後まで飲み切る
現在、「ピロリ菌」の除菌には一次除菌・二次除菌ともに「三剤併用療法」が保険適用です。
除菌には抗生物質を多めに使用するため、下痢などの副作用が起こることもありますが、軽いものであれば我慢して最後まで薬を飲み切り、除菌を完了させてしまうことをお勧めします。
何か副作用が起きたからといって自己判断で勝手に薬を止めてしまわず、継続か中断かの判断は必ず主治医と相談の上で決めるようにしてください。
薬剤師としてのアドバイス:子どもであっても、除菌を推奨
小児でも、「ピロリ菌」は胃炎や潰瘍の原因となるため、除菌が推奨されています。
特に小児の場合、「ピロリ菌」の感染が原因で、鉄欠乏性貧血を起こす可能性があります。
「ピロリ菌」に感染しているかどうかは、吐いた息だけで簡単に検査することも可能(尿素呼気試験)ですので、気になる場合は一度病院で検査を受けるようにしてください。
+αの情報:十二指腸潰瘍に比べ、胃潰瘍の割合が低い理由
十二指腸潰瘍の原因の90%以上が「ピロリ菌」であるのに対し、胃潰瘍では「ピロリ菌」以外の原因のものが20~40%程度存在します1)。
これは、『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』等のNSAIDsの副作用や、ストレスが原因の胃潰瘍も多いためです。
NSAIDsによる副作用や、ストレスによる胃潰瘍には「ピロリ菌」は関係していません。同じ胃潰瘍であっても、正しい原因を突き止め、適切な対処をすることが重要です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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