ステロイド外用剤の強さは?~5つのランクと使い分け
記事の内容
5つのランクに分類され、塗る場所によって厳密に使い分ける
ステロイドの塗り薬は、その強さによってⅠ群~Ⅴ群の5つのランクに分類されています。
※ステロイド外用剤の強さのランク
Ⅰ群:最も強い(Strongest)
Ⅱ群:非常に強い(Very Strong)
Ⅲ群:強い(Strong)
Ⅳ群:普通(Medium)
Ⅴ群:弱い(Weak)
人間の皮膚は部位によって厚さが異なるため、同じ薬を塗っても吸収される量が変わります。そのため、薬を塗る部位によって、ステロイドも厳密に使い分ける必要があります。
【Ⅰ群(Strongest)】
最も強いもの。一般的に、手足や身体の症状のひどい場所に使う。
デルモベート(クロベタゾールプロピオン酸エステル)
ダイアコート、ジフラール(ジフロラゾン酢酸エステル)
【Ⅱ群(Very Strong)】
二番目に強いもの。一般的に手足や身体に使う。
フルメタ(モメタゾンフランカルボン酸エステル)
アンテベート(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)
トプシム、シマロン(フルオシノニド)
リンデロンDP(ベタメタゾンジプロピオン酸エステル)
マイザー(ジフルプレドナート)
ビスダーム(アムシノニド)
ネリゾナ、テクスメテン(ジフルコルトロン吉草酸エステル)
パンデル(酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン)
【Ⅲ群(Strong)】
中間の強さ。首やお腹など、皮膚の柔らかい部位にも使える。
メサデルム(デキサメタゾンプロピオン酸エステル)
リンデロンV、ベトネベート(ベタメタゾン吉草酸エステル)
エクラー(デプロドンプロピオン酸エステル)
ボアラ、ザルックス(デキサメタゾン吉草酸エステル)
プロパデルム(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)
フルコート(フルオシノロンアセトニド)
【Ⅳ群(Medium)】
ステロイドとしては弱い部類のもの。顔や、赤ちゃんにも使える。
リドメックス(プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル)
アルメタ(アルクロメタゾンプロピオン酸エステル)
キンダベート(クロベタゾン酪酸エステル)
ロコイド(ヒドロコルチゾン酪酸エステル)
レダコート、ケナコルトA(トリアムシノロンアセトニド)
【Ⅴ群(Weak)】
最も弱いもの。
プレドニゾロン(プレドニゾロン)
参考) 南江堂 「今日の治療薬2016」
注意①:薬剤に表記されたステロイドの成分量(mg)や濃度(%)は、薬の強弱とは直接関係ありません。
注意②:「リンデロン」は、語尾についたアルファベット(DP、V、VG、A)によって全く異なる別の薬です。
回答の根拠①:部位による薬の吸収比
身体の部位によって、薬の吸収率は大きく異なります。下記は、腕を1としたときの吸収比率です1)。
1) J Invest Dermatol.48(2):181-3,(1967) PMID:6020682
同じ薬を塗ったとしても、「足のうら」と「顔」では100倍も吸収率が異なります。そのため、「足のうら」と「顔」で同じステロイドは使いません。
不必要なほど強力なステロイドを使い続けていると、皮膚が薄くなる皮膚萎縮という副作用を起こすことがあるので、ステロイド外用剤は指示された場所以外には使わないようにしてください。
回答の根拠②:ランク分けの基準
ステロイドには様々な薬理作用がありますが、いわゆる薬としての有効性は、血管収縮作用の強さと相関することがわかっています。
そのため、現在は各ステロイドの血管収縮作用の強さによって、ランク分けが決められています2)。
2) Arch Dermatol.89:741-6,(1964) PMID:14122107
しかし、皮膚の状態によっても薬の吸収率は大きく変わってしまうため、このランク分けはあくまで判断基準の一つとして用います。
薬剤師としてのアドバイス①:「たかが塗り薬」と油断しない
塗り薬は家族の間で薬を使い回したり、指示された場所以外のところに使ったり、といった勝手な使い方をする人が少なくありません。
しかし、同じステロイドの塗り薬であっても、使う場所によって明確に使い分ける必要があります。足に処方された薬を顔に塗ったりすることは、非常に危険です。
「たかが塗り薬」と油断することなく、薬は医師・薬剤師の指示に従って正しく使い、他人の薬を勝手に使ったりしないようにしてください。
薬剤師としてのアドバイス②:薬には、いつも原則と例外がある
通常は顔に使用しないⅢ群の『リンデロンV』であっても、症状が酷い場合には使うこともあります。薬を使うメリットがデメリットを上回る場合には、様々な例外が起こり得ます。
インターネットで検索した結果、「顔には使わない薬です」と書いてあったとしても、それはあくまで原則であって、個々の症状や状況によっては必ずしもそうとは限りません。
原則に惑わされて適切な治療を受けられない、といったことがないよう、薬の疑問や不安については、必ず主治医やかかりつけの薬剤師に相談するようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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