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知っておくべきこと 薬物動態学

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薬が効き始めるまで、どのくらいかかる?

回答:薬ごとの血中濃度のデータから推察する

 一般的に、血液中の薬物濃度が高くなれば、薬は効き始めます。

 しかし、この濃度がどのように増減するかは薬によって大きく異なるため、それぞれの添付文書に記載された血中濃度のデータから概算する必要があります。
 ただし、血中濃度と関係なく効果が続く薬もあり、一概に同じ方法で概算することはできません

 中には、アレルギー治療に用いる「抗ヒスタミン薬」のように、具体的に効果が現れるまでの一般的な時間が明記された薬もあります。

回答の根拠:体内動態データ

 薬は、消化管から吸収されたあと、血液に乗って全身に運ばれ、薬効・薬理作用を発揮します。

 この時、血液中でどれくらいの濃度になっているか?という「血中濃度」のデータが、薬の効果や副作用を判断する一つの指標になります。 
薬の血中濃度変化

血中濃度:血液中で、飲んだ薬がどのくらいの濃度になっているか
Cmax:最高血中濃度。飲んだ薬が、身体の中で最も濃くなったときの濃度
Tmax:薬を飲んでからCmaxに到達するのに要する時間
T1/2:半減期。Cmaxに到達した後、血中濃度が半減するのに要する時間

 例えば、効果や副作用が最も強くなるタイミングと、薬が血液中で最も濃くなるタイミング(Tmax)は、無関係ではありません。

 また、効果や副作用が弱まってくる時間は、薬が50%・・25%・・12.5%と減ってくる時間(T1/2)と関係します。薬物動態学上、半減期の8倍分の時間が経過した時点で、身体から薬が消失したと判断します。

 こういったデータは、薬によってそれぞれ個別に異なる固有の値を示します。

薬剤師としてのアドバイス:わからなければ、薬剤師に相談する

 薬理学上は効果を発揮していたとしても、薬を飲んだ本人が効果を実感できていなければ、それは薬がしっかりと効いたことにはなり得ません。

 そのため、こうした血中濃度の数字は一つの参考基準となるだけで、全ての人にとって納得のいく数字というわけではありません。

 薬には、血中濃度とは関係なく効果を発揮するもの、そもそも消化管から吸収されずに効果を発揮するもの、続けて服用し続けていれば血中濃度が一定になるものなど、様々なタイプのものがあります。

半減期が短いのに1日1回の服用で良いPPI

 『タケプロン(一般名:ランソプラゾール)』などのPPIは、胃のプロトンポンプを不可逆的に阻害します。そのため、薬が血液中から消失しても、胃酸を抑える効果が持続します。

服用を中止してからも、しばらく手術ができない抗凝固薬

 『ワーファリン(一般名:ワルファリン)』などの抗凝固薬は、血液の凝固因子を不可逆的に阻害します。そのため、薬が血液中から消失しても出血のリスクがあり、しばらくは手術をすることはできません

そもそも消化管から吸収されない便秘薬

 便秘薬である『プルゼニド(一般名:センノシド)』や『マグミット(一般名:酸化マグネシウム)』は、消化管から吸収されず、そのまま薬効・薬理作用を発揮します。そのため、血中濃度のデータは存在しません。

服用から2週間は効果が現れないSSRI

 『ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)』や『パキシル(一般名:パロキセチン)』などのSSRIは、服用から2週間程度は効果が現れてきません。これには諸説ありますが、BDNF仮説などによって説明することができます。

服用を続けると血中濃度が一定になる長時間型の睡眠薬

 『ドラール(一般名:クアゼパム)』や『ダルメート(一般名:フルラゼパム)』などの長時間型の睡眠薬は、しばらく服用を続けていると、体内から消失する薬の量と、新たに服用する薬の量が同じになり、血中濃度がある一定の濃度で安定(定常状態)するようになります。
 これによって身体を睡眠できる状態に整え、少ない副作用で安定した効果を発揮することが可能です。

 このように、薬によってその効果の現れ方は千差万別ですので、自力で血中濃度データと睨めっこするよりも、薬剤師に相談することをお勧めします。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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