「医薬品」と「健康食品」の違いは?~薬事法による効果・効能の制限
回答:効果・効能をうたえるかどうか
薬事法によって、効果・効能をうたっても良いのは「医薬品」だけと決められています。 「医薬品」は、確実に効果が出る、と言えるものです。その効果は、偶然の結果や他の要因による影響の可能性は全て排除した、と証明されています。
「健康食品」でも、人によっては効果が得られる可能性はあります。しかし、その効果は個人差が非常に大きく、またそれが偶然の結果である可能性、他の要因によって生まれた可能性を、完全に排除し切れていません。
つまり、「健康食品」は確実に効果が出るとは言えない、ということになります。
確実に効果が出るとは限らない「健康食品」が効果・効能をうたうと、薬事法違反になります。
※「特定保健用食品(トクホ)」、「栄養機能食品」、「機能性表示食品」は、限られた機能の表示が認められている、特別な食品です。
回答の根拠①:偶然の結果でないことの証明
「医薬品」の効果は、極めて複雑な統計学的処理によって、偶然の結果でないことが証明されています。 人間には個人差があるので、全ての人に全く同じ結果が得られることは絶対にありません。そのため、少なからず誤差が出ます。
薬を使って差が生じたとき、誤差によって生まれた差なのか、薬の効果によって生まれた差なのか、を区別しなければなりません。
このとき、「有意差」という指標を用います。これは、統計学的に見て、偶然では生まれない差である、ということを意味します。
逆に言えば、例え見た目は大きな差であっても、「有意差」がついていない差は、単なる偶然や誤差でしかありません。
回答の根拠②:他の要因による影響の排除
「医薬品」による効果を検証するとき、他の要因による影響を排除する必要があります。例えば薬を飲んだら血圧が下がったとします。このとき、薬を飲んだ人たちはみんな運動もし、塩分も控え、ストレスも減っていたとします。一方、薬を飲まなかった人たちはみんな運動をせず、塩分を好き放題とり、ストレスがかかっていたとします。
この場合、本当に薬によって血圧が下がったのか、あるいは運動をしたから下がったのか、塩分を控えたから下がったのか、ストレスが減ったから下がったのか、どれが要因なのかがわかりません。
そのため、「医薬品」では効果を検証する際、薬以外の条件(背景)を全て揃えてから行う必要があります。これには年齢、性別、病歴、身長、体重、運動習慣、摂取カロリー等々、多種多様なものが含まれます。
回答の根拠③:健康食品には、統計処理も臨床試験も必要ない
「健康食品」には、先述の「医薬品」のような検証を行う必要がありません。統計学的処理や臨床試験を行わずに販売することができます。これによって、開発にかかる費用を低く抑えることもできますが、その分、効果・効能をうたうことが禁止されています。
そこで、「健康食品」では効果・効能の代わりによく”個人の感想”を用います。
私は、このシジミエキスを飲んで、元気になりました
私は、このヒアルロン酸を飲んで、肌がツヤツヤした気がします
・・・これらは、あくまで”個人の感想”なので、科学的根拠もなければ、他人が使用して同じ効果が得られる保証も全くありません。もしかすると、元気になったと感じたのはたまたまかもしれません。肌がツヤツヤしたのは洗顔フォームを変えたからかもしれません。
乱暴な言い方をすれば、「こたつでみかんを食べたら、次の日走るのが早くなった」とか、「年末にトイレで象さんの歌を3回唄ったら、次の年からお通じが良くなった」・・・といった発言と同じくらい、根拠と再現性のないものです。
宗教と同じように、信じる信じないは自由ですが、偶然や別の要因による影響かもしれないものついて効果・効能をうたってはいけない、というのが薬事法のスタンスです。
補足説明:医薬品的な表現の禁止
どういった表現が効果・効能にあたるのか、については様々な意見があります。一般的に、「医薬品でないのに、効果があると言っていると疑わしいもの」については、厳しい判断が下される傾向にあります。
※医薬品的な表現に該当するもの
生活習慣病の予防
動脈硬化を防ぐ
老化防止
細胞の活性化
上記のような、疾患の予防に対する効果や身体の機能向上に対する効果を「健康食品」がうたうことは禁止されています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
この記事へのコメントはありません。