『ロゼレム』ってどんな薬?~「メラトニン」と体内時計、五輪選手の時差ボケ対策にも
記事の内容
回答:「メラトニン」に作用し、体内時計を「夜」にする薬
『ロゼレム(一般名:ラメルテオン)』は、不眠症の治療に使う睡眠薬です。
体内時計を司るホルモン「メラトニン」の作用を助け、身体を「夜」モードに切り替えることで、自然な眠りを誘う効果があります。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と違い、足元がふらついたり、翌朝にまで眠気を持ち越すといった副作用が無いのが特徴です。
『ロゼレム』は、特に昼夜逆転するタイプの不眠症に効果が高く、海外渡航時の「時差ボケ」の是正薬としても使われます。
回答の根拠:体内時計を司る「メラトニン」の作用
「メラトニン」は、眼から入った光によって分解されます。
そのため、太陽の光が強い昼間には「メラトニン」が少ない状態が続きますが、太陽が沈んで暗くなってくると「メラトニン」は増えてきます。
この「メラトニン」の増減リズムを利用して、ヒトの身体は「昼」と「夜」を認識しています。
『ロゼレム』は「メラトニン」の受容体を刺激することで、「メラトニン」の作用を強めます1)。この作用によって、体内時計が「夜」に調節され、自然と眠気を生じるようになります。
1) ロゼレム錠 添付文書
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬よりも、副作用が少ない
『デパス(一般名:エチゾラム)』のようなベンゾジアゼピン系の睡眠薬と比べると、筋弛緩作用がないため足元がふらつくこともなく、また翌朝や日中まで眠気を持ち越すといった副作用が少ないのも特徴です2)。
2) J Clin Sleep Med.5(1):34-40,(2009) PMID:19317379
薬剤師としてのアドバイス:『ロゼレム』を飲んだあとは部屋も暗くし、明るい液晶画面を見ない
自然界では夜に強い光を浴びることはないため、洞窟に引き籠りでもしない限り、体内時計が狂うことはありません。
しかし、現代社会においては照明やテレビ・スマートフォン等の明るい液晶画面があり、深夜でも強い光を浴びる機会に溢れています。
こういった人工的な光の刺激でも「メラトニン」は分解されてしまいます。
『ロゼレム』を飲んだ後に、明るい部屋に居たり、テレビやスマートホン等の明るい液晶画面を見ていると、薬の効果も弱まり、体内時計は更におかしくなってしまいます。
寝る何時間前、という飲み方ではなく、布団に入る直前に飲むことをお勧めします。
+αの情報:オリンピック選手の「時差ボケ」解消にも
『ロゼレム』は、海外渡航時の「時差ボケ」を解消するための薬として、海外では空港で市販されているところもあります。
2016年のブラジル・リオ五輪の選手向けのコンディショニングガイドでも、時差ボケの対策例として『ロゼレム』の使用が挙げられています3)。
3) 公益財団法人日本オリンピック委員会 「JOC Conditioning Guide for Rio 2016」
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
>IMOさん
すみません、わざわざご指摘ありがとうございます、誤字がありましたので修正致しました。
こうした人工的な光の刺激でも「メラトニン」は分解されていまいます。
誤字だと思われます。