■サイト内検索


スポンサードリンク

抗生物質 抗ウイルス薬

/

「細菌」と「ウイルス」の違いは?~風邪に抗生物質が効く、効かない

回答:むしろ共通点がないくらい、違う

 「細菌」と「ウイルス」を比較したとき、共通する点は”ヒトに感染して、感染症の原因となる”という1点だけです。それ以外は全て異なります。
 「ヒト」・「細菌」・「ウイルス」の三者を比較した時、「ヒト」と「細菌」の方が近い関係にあります。そのくらい「細菌」と「ウイルス」は異なります。
ウイルスと細菌と人間

 ここでは特徴的な以下5点について解説します。

1.大きさ
2.食事と排泄
3.増殖の方法
4.ヒトに感染する目的
5.構造

 
 ひとことに”感染症”と言っても、ウイルスに感染した時には「抗ウイルス薬」、細菌に感染した時には「抗生物質」を使う必要があります。
 ウイルスを「抗生物質」で退治したり、細菌を「抗ウイルス薬」で退治したりすることは、一切できません。

※ウイルス感染症の例
 風邪症候群、流行性のインフルエンザ、ヘルペス、エイズ、エボラ出血熱、SARS、MERSなど

※細菌感染症の例
 コレラ、赤痢、破傷風、細菌性髄膜炎、扁桃腺炎、副鼻腔炎、細菌性胃腸炎など

詳しい回答①:風邪に抗生物質を使う?

 「風邪は、抗生物質で治す」と誤解している人は少なくありません。

 「風邪」は「ウイルス性の感染症」です。そのため、「風邪」を「抗生物質」で治すことはできません。
 「抗生物質」が処方されたということは、正確には「風邪」ではなく、「扁桃腺炎」や「副鼻腔炎」といった「細菌性の感染症」と診断された、ということです。
風邪と抗生物質

 一般的に、”熱が出て、咳やハナが出る”症状があれば、なんでも「風邪」と思い込んでしまいがちです。

 そのため、実際には「細菌感染症」を「抗生物質」で治療しているにも関わらず、「風邪」を「抗生物質」で治療している、と誤解してしまうことが、よく起こります。

詳しい回答②:「細菌」と「ウイルス」は、こんなにも違う

1.大きさ:1000倍以上の差

細菌とウイルス1~大きさ
 代表的なものの大きさでも、1,000倍以上の差があります。
 これは、ウイルス(10~100nm)をビー玉(1.7cm)くらいの大きさと仮定すると、細菌(1μm)は4階建てのビル(17m)ほどの大きさになります。

 そのため、「細菌」は光学顕微鏡で見ることができますが、「ウイルス」は電子顕微鏡でなければ見ることはできません

2.食事と排泄:食べたらウンコするか?

 「細菌」は「ヒト」と同じように、栄養源を摂取し、老廃物を排泄して生活しています。平たく言うと、食べたらウンコをする、ということです。

 「ウイルス」は、生活をしていません。何の活動もしないので、栄養源やエネルギーを必要としません。そのため、老廃物を排泄することもありません。”生物”というカテゴリに当てはまらないとする学説すらあります。
細菌とウイルス2~食べ物と排泄
※「細菌」の排泄物(ウンコ)
 「細菌」の排泄物(ウンコ)が、「ヒト」にとって有害なものであれば”病原菌”と見なされます。
 大腸菌であるO-157は、ベロ毒素と呼ばれる出血性大腸炎の原因物質を作るため、「ヒト」にとっては有害な”病原菌”です。

 一方、「ヒト」にとって有益なものであれば”善玉菌”のように共存して生きていくことになります。
 乳酸菌は、乳酸を作って腸内環境を整えてくれるため、「ヒト」にとっては有益な”善玉菌”です。

 このように「ヒト」と「細菌」は、共に生物として時に対立、時に共存しながら、地球上で生きている存在です。

3.増殖の方法:自力で子どもを作るか?

 「細菌」は、「ヒト」と同じように子どもを作ります。作り方は大きく異なりますが、自力で分裂して数を増やします。

 「ウイルス」は、自力で子どもを作ることができません。「ウイルス」が数を増やそうとするとき、必ず別の生物の細胞に寄生する必要があります。そして、寄生した生物のエネルギーや栄養素を横取りして、数を増やします。
細菌とウイルス3~分裂と寄生

4.感染する目的:「ヒト」に感染するのは何故か?

 「細菌」は、つまるところ「ヒト」とは関係なく、己の生命を謳歌している生き物です。
 例えば大腸菌は、道端の苔の中、河川の水の中、庭の土の中、海底の泥の中・・・様々な生活環境がある中で、たまたま、「ヒト」の腸の環境が心地よかったので、腸に住んでいるだけです。
細菌とウイルス4~感染目的
 「ヒト」に感染する「細菌」も、たまたま「ヒト」の体内環境が適していたので移住してきただけです。

 生卵に居る「サルモネラ菌」や、魚肉に居る「ウェルシュ菌」は、何も「ヒト」に感染して食中毒を起こさせるために存在しているわけではありません。彼らは彼らなりにその環境で生活しているところ、不幸にも「ヒト」と出遭ってしまい、害を及ぼすだけです

 ところが「ウイルス」は、「ヒト」など他の生物の細胞に寄生しなければ何の活動もできません。つまり、最初から他の生物に感染して、害をなす(エネルギーを横取りする)ことを目的に存在しています。”何に寄生するか”という選択肢しかありません。

5.構造の違い:ウイルスは遺伝情報しか持っていない

 「細菌」は動物や植物と同じように、”細胞”としての構造を持っています。動き回るための組織(鞭毛)、餌を食べるための組織(リボソーム)、エネルギーを作るための構造、子どもを作るための構造などを備えています。
 
 「ウイルス」は遺伝情報であるDNA・RNAと、それ覆う殻だけで構成されています。呼吸もしなければ、餌を食べることもせず、エネルギーを作ることもなく、子どもを作るわけでもないため、必要最低限の遺伝情報しか持っていません
細菌とウイルス5~構造
 ※「細菌」には細胞壁の有無、「ウイルス」にはエンベロープの有無など、種類によって細かな違いがあります。

薬剤師としてのアドバイス:「細菌」と「ウイルス」を混同しない

 以上のように、「細菌」と「ウイルス」は、共に”病原体”や”ばい菌”といった表現で一括りにされてしまうこともありますが、全く異なるものです。
 そのため、感染した際に使う薬も違えば、感染しないよう消毒する時に使う薬品も異なります(例:ノロウイルスは、アルコールで消毒できないため、塩素を使う)。

 とんちんかんな対応や、無意味な対策をすることがないよう、「細菌」と「ウイルス」はしっかりと区別して考えるようにしましょう。

 
 

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

コメント

    • kebaotane
    • 2017年 11月 01日

    こやつちょいと知りたかったのでありがとうございました。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

■主な活動

【書籍】
■羊土社
薬の比較と使い分け100(2017年)
OTC医薬品の比較と使い分け(2019年)
ドラッグストアで買えるあなたに合った薬の選び方を頼れる薬剤師が教えます(2022年)
■日経メディカル開発
薬剤師のための医療情報検索テクニック(2019年)
■金芳堂
医学論文の活かし方(2020年)
服薬指導がちょっとだけ上手になる本(2024年)

 

【執筆】
じほう「調剤と情報」「月刊薬事」
南山堂「薬局」、Medical Tribune
薬ゼミ、診断と治療社
ダイヤモンド・ドラッグストア
m3.com

 

【講演・シンポジウム等】
薬剤師会(兵庫県/大阪府/広島県/山口県)
大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

【監修・出演等】
異世界薬局(MFコミックス)
Yahoo!ニュース動画
フジテレビ / TBSラジオ
yomiDr./朝日新聞AERA/BuzzFeed/日経新聞/日経トレンディ/大元気/女性自身/女子SPA!ほか

 

 

利益相反(COI)
特定の製薬企業との利害関係、開示すべき利益相反関係にある製薬企業は一切ありません。

■ご意見・ご要望・仕事依頼などはこちらへ

■カテゴリ選択・サイト内検索

スポンサードリンク

■おすすめ記事

  1. 『キサラタン』と『チモプトール』、同じ緑内障の点眼薬の違いは…
  2. ステロイド外用剤の『リンデロン』、DP・V・VG・Aの違いは…
  3. 『プロペト』と『ヒルドイド』、同じ保湿剤の違いは?~副作用と…
  4. 『クレストール』と『メバロチン』、同じコレステロールの薬の違…
  5. 『ナウゼリン』と『プリンペラン』、同じ吐き気止めの違いは?~…
  6. 『ラシックス』と『フルイトラン』、同じ利尿薬の違いは?~ルー…
  7. 『アムロジン』・『ワソラン』・『ヘルベッサー』、同じCa拮抗…

■お勧め書籍・ブログ

recommended
recommended

■提携・協力先リンク

オンライン病気事典メドレー

banner2-r

250×63

スポンサードリンク
PAGE TOP