「食前」に飲むべき薬の理由
薬の中には、「食前」に飲むべきものがいくつか存在します。しかし、それぞれ「何故、食前に飲むべきなのか?」といった理由が異なります。
そのため、食前に飲み忘れた場合は食後に飲んでもそれほど効果が変わらないもの、食後に飲んでも効果がとても弱くなってしまうもの、食後には飲んではいけないもの・・・など、色々あります。
もちろん、一番良いのは飲み忘れないことですが、万が一飲み忘れた時の対応も医師や薬剤師に予め質問しておくと良いでしょう。また、食前である理由をきちんと知っておくことで、飲み忘れてしまった時の対応も可能になります。
記事の内容
食前に飲んだ方がより効果的に薬の恩恵を得られるが、忘れた時は食後でも飲むべきもの
【例①:漢方薬】
漢方薬はお腹の空いている時に服用することで、効果が緩やかな有機酸成分の吸収を促し、副作用の強いアルカロイド成分の吸収を抑えることができます。
しかし、食後でも効果がゼロになるわけではないので、飲み忘れた場合は食後でも良いので指示された回数を服用しましょう(漢方薬を食前に飲むメリット)。
【例②:ナウゼリン、プリンペラン】 ※ナウゼリンとプリンペランの違い
ナウゼリンやプリンペランは吐き気止めの薬です。食べたものが胃に長く留まって不快感が出ることを抑える効果があります。そのため、食事前に薬を飲み、あらかじめ胃や腸の動きを整えておくことによって、より薬が効果的になります。
これも食前でなければ絶対にダメというわけではないので、飲み忘れた場合はその時点で飲むようにしましょう。
食前でなければ意味がなく、他のタイミングで飲んではいけないもの
【例①:食後の過血糖を予防する糖尿病薬(ベイスン、グルコバイ、セイブル等のα-グルコシダーゼ阻害薬)】
【例②:食後のインスリン分泌を促進する糖尿病薬(ファスティック、スターシス、グルファスト等のインスリン分泌促進薬)】
これらの薬は、食事の後に血糖値が急上昇することを予防するために飲む薬です。ごはんやパンよりも早く、胃や腸へ薬が届くことを想定した薬です。そのため、食事が終わってから飲んでも”手遅れ”になってしまいます。
また、血糖値が上がっていない時に服用すると「低血糖」を起こしてしまう可能性もあります。
食前に飲まなければ、薬の効果が大きく低下してしまうもの
【例①:リファンピシン】
リファンピシンは食後に飲むと、血液中の薬の濃度が十分に上がらず吸収も遅れる1,2)といった報告などがあります。そのため、用法が『朝食前』に指定されています(リファンピシンは何故、食前に飲む必要があるのか?)。
1) 結核.47(4):69-73,(1972)
2) 医薬ジャーナル.22(1);113-117,(1986)
【例②:ボナロン、ベネット、アクトネル等の骨粗鬆症治療薬】
詳しくはこちら→ビスホスホネートの用法が「食後」でも「食前」でもない理由
ビスホスホネート製剤と呼ばれる骨粗鬆症治療薬は、朝起きてすぐの空腹時に飲む薬です。お腹の中で、カルシウムやマグネシウムなどの成分が一緒になると、吸収されなくなってしまいます。
そのため、胃が空っぽの状態の時に必ず水で服用し、更に薬を飲んだ後30分は食事も摂らないようにします。
この薬は他にも、薬の成分が喉につっかえていたり、胃から逆流してきたりすると、食道の粘膜を激しく傷つけてしまいます。そのため、胃の内容物が移動してしまうような動き、特に横になったり寝転んだりといった行動は控える必要があります。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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