『ケナログ』と『デキサルチン』、同じ口内炎の薬の違いは?~効果と副作用・適応症
記事の内容
回答:歯肉炎にも適応のある『ケナログ』、効果が高めの『デキサルチン』
『ケナログ(一般名:トリアムシノロン)』と『デキサルチン(一般名:デキサメタゾン)』は、どちらも口内炎に使うステロイドです。
『ケナログ』は、歯肉炎にも適応があります。
しかし、『デキサルチン』の方が治癒速度が速く、副作用も少ない傾向にあります。
ただし、口内炎で問題になる「痛み」を和らげる効果に違いはないため、特別な使い分けは必要ありません。
回答の根拠①:口内炎に対する効果
『ケナログ』と『デキサルチン』では、口内炎による痛みを和らげる効果に違いはありません1)。しかし、潰瘍を治癒させるスピードや、副作用の少なさでは『デキサルチン』の方が優れるとされています1)。
1) Quintessence Int.40(5):399-404,(2009) PMID:19582244
そのため、より高い効果を期待できる『デキサルチン』の方が、よく用いられています。
回答の根拠②:適応症の違い
口内炎にしか適応のない『デキサルチン』と違い、『ケナログ』は歯肉炎にも適応があります2,3)。そのため、『ケナログ』は歯科領域でも使われることがあります。
また、『ケナログ』と同じ「トリアムシノロン」の製剤は、OTCの口内炎治療薬としても販売されています。
2) ケナログ口腔用軟膏 添付文書
3) デキサルチン口腔用軟膏 添付文書
薬剤師としてのアドバイス:発熱や、まぶたの湿疹も伴う口内炎には注意
口内炎はほとんどの場合、薬を使わなくても1週間程度で治ります。しかし、ヘルペス・帯状疱疹などのウイルス感染症や、カンジダなどの真菌感染症、類天疱瘡などの自己免疫疾患でも、口内炎が現れることがあります。
また、発熱を伴っていたり、口の中だけでなく結膜(まぶたの裏)にも同じような症状が出ていたりするような場合は、薬の副作用(例:スティーヴンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS、皮膚粘膜眼症候群))である恐れもあります。
口内炎が、薬を使っても悪化していく場合、1週間以上治らない場合には、病院を受診するようにしてください。
ポイントのまとめ
1. 『ケナログ』と『デキサルチン』で、痛みを和らげる効果に違いはない
2. 潰瘍の治療効果や副作用の点では、『デキサルチン』がやや優れる
3. 歯肉炎に対する適応は、『ケナログ』にしかない
添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較
◆用法(使い方)
ケナログ:通常、適量を1日1~数回患部に塗布する。なお、症状により適宜増減する。
デキサルチン:通常、適量を1日1~数回患部に塗布する。なお、症状により適宜増減する。
◆適応症
ケナログ:びらん又は潰瘍を伴う難治性口内炎、または舌炎。慢性剥離性歯肉炎
デキサルチン:びらん又は潰瘍を伴う難治性口内炎、または舌炎。
◆使用期限
ケナログ:3年
デキサルチン:4年
◆OTCとしての販売
ケナログ:トリアムシノロン製剤がOTCとして販売されている
デキサルチン:デキサメタゾン製剤はOTCとして販売されていない
◆資料請求先
ケナログ:ブリストル・マイヤーズ
デキサルチン:日本化薬
+αの情報:『ケナログ』は販売中止に
『ケナログ』は、医療用・OTCともに販売中止になることが決まりました(2019年3月:経過措置終了)。
ただし、OTCでは『ケナログ』以外にも「トリアムシノロン」の製剤は軟膏・パッチ剤どちらも豊富に販売されています。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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