『ロキソニン』や『カロナール』などの解熱鎮痛薬を、熱がない時に使うと平熱が下がって低体温になる?
記事の内容
回答:基本、ならない
『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』や『カロナール(一般名:アセトアミノフェン)』など解熱鎮痛薬は、基本的に平熱(36~37℃)には影響しません。
薬の「解熱効果」は、主に平熱に上乗せされた余分な熱に対して発揮されるからです。
そのため、熱がない時に解熱鎮痛薬を使ったら低体温になり、何か大きな健康被害につながる、ということはありません。
ただし、高熱を出している人に使った場合は熱が下がり過ぎることもあるため、経過に注意する必要があります。
回答の根拠①:発熱のメカニズムとNSAIDsの解熱作用
ヒトが生命活動を維持するために必要な体温(平熱)は、間脳の「視床下部」にある「体温中枢(体温調節中枢)」によって調節されています。
この「体温中枢」では通常、体内の様々な酵素が最も活発になる36~37℃に設定(セットポイント)されています。
細菌やウイルスに感染すると、その活動を抑えるためにヒトは体温を上昇させます。
このとき、身体は「プロスタグランジン」を産生し、「体温中枢」の設定(セットポイント)を36~37℃から1~2℃ほど上昇させることで、発熱を促します。
『ロキソニン』などのNSAIDsは、この「プロスタグランジン」の産生を抑えることで解熱効果を発揮します1)。
1) ロキソニン錠 添付文書
このように平熱に関わる「体温中枢」には作用しないため、発熱していない36~37℃の時に薬を使ったからといって、体温が下がって低体温になることは基本的にありません。
回答の根拠②:『カロナール』の解熱作用と、低体温の経過
『カロナール』など「アセトアミノフェン」製剤による解熱効果は、「体温中枢」に作用して皮膚血管を広げることによって得られる放熱作用が主体です2)。
2) カロナール錠 添付文書
この作用も「体温中枢」を強引に抑える作用ではないため、発熱していない36~37℃の時に薬を使ったからといって、体温が下がって低体温になることは基本的にありません。
回答の根拠③:高熱を出している場合には注意が必要
発熱している人、特に高熱で消耗している高齢者や子どもは、『ロキソニン』や『カロナール』などの解熱鎮痛薬で体温が下がり過ぎることがあります1,2)。
そのため、高熱時に解熱薬を使った場合は、しばらく経過に注意しておく必要があります。
ただし、『カロナール』による低体温は、いずれも症状はほとんどなく無処置で回復しています3)。
3) 厚生労働省 小児薬物療法検討会議 報告書「アセトアミノフェンの小児科領域における解熱及び鎮痛」
そのため、高熱の場合や高齢者、子どもの場合は『カロナール』を使うのが一般的です。
ただし、薬が過量になると様々な副作用のリスクも高まるため、安全な印象のある『カロナール』でも、最低4時間の服用間隔を空けるなど、きちんと用法・用量を守って使う必要があります。
薬剤師としてのアドバイス:解熱薬は、あくまで対症療法
薬で熱を下げても、インフルエンザなどの感染症が早く治るわけではありません。解熱薬は、あくまで高熱による辛さを解消するための対症療法です。
そのため、熱による辛さが無ければ無理に薬を使う必要はありません。
また、発熱は36~37℃の平熱近くまで熱を下げる必要はありません。1℃も体温が下がれば、熱による辛さは大きく和らぐため、十分に解熱剤の効果は発揮されていると言えます。
ただし、38~38.5℃を超えるような高熱は脱水や消耗のリスクになること、深部体温が40℃を超えると生命に関わる恐れもあることから、特に小さな子どもや高齢者では必要に応じて解熱薬を使うようにしてください。
+αの情報:インフルエンザの時は、使う薬に要注意
「インフルエンザ」のときの解熱は慎重に行う必要があります。特に『ロキソニン』や『ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)』等のNSAIDsを使うと「インフルエンザ脳症」を誘発する恐れがあります。
小児のインフルエンザ感染が疑われる際には、『カロナール』を使用することが推奨されています4)。
4) 日本小児神経学会 「インフルエンザ脳症はどうしたら予防できますか?」
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
【加筆】
『カロナール』など「アセトアミノフェン」製剤による低体温の事例について加筆しました。