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薬の誤解 筋弛緩薬

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肩凝りの薬をもらったが、「筋弛緩薬」と書いてある。そんな怖い薬を飲んでも大丈夫?

di-terne

回答:肩凝りに使う「筋弛緩薬」は、怖い印象のある「筋弛緩薬」とは別の薬

 筋弛緩薬には、「末梢性」と「中枢性」の2種類があります。多くの方が「怖い」と認識している筋弛緩薬は、「末梢性」の筋弛緩薬です。

 「末梢性」の筋弛緩薬は、重度の麻痺や痙攣などに使うもので、扱いが難しく、時には死亡例が報道されることもある薬です。
 「中枢性」の筋弛緩薬は、肩凝りや腰痛、緊張型頭痛などにもよく使う薬です。
筋弛緩薬~中枢性と末梢性
 「筋弛緩薬」という同じカテゴリに分類されているため、まとめて怖い薬という印象を持っている方がおられますが、使う目的も作用のメカミズムも全く異なる別の薬です。

回答の根拠①:「筋弛緩薬=怖い薬」の理由

 2000年に仙台で、准看護師が点滴で「筋弛緩薬」を過量に投与して患者を死亡させた(1人死亡、4人重篤)、という事件がありました。このとき使われた薬が、末梢性の筋弛緩薬である『マスキュラックス(一般名:ベクロニウム)』です。

 この事件が大きく報道されたため、「筋弛緩薬=死ぬこともある怖い薬」という強い印象が残りました。

 しかしこういった報道の際、わざわざ「末梢性」の筋弛緩薬とは言わないため、「末梢性」と「中枢性」の筋弛緩薬をどちらも「怖い」と感じてしまう原因になっています。

回答の根拠②:末梢性と中枢性の大きな違い

 「筋弛緩薬」は骨格筋を弛緩させる効果の薬の総称で、様々な目的で使用されますが、以下のように大別することができます。

※「末梢性」の筋弛緩薬(使い方が難しい方)
作用機序
: 筋肉の収縮システムや神経伝達を阻害することで、全身の筋肉の収縮を止める
主な目的 : 全身麻酔薬や抗精神薬による悪性症候群、脳・脊髄の異常による痙攣性の麻痺などの改善
薬剤の例 : 『ダントリウム(一般名:ダントロレン)』、『ボトックス(一般名:A型ボツリヌス毒素)』、『マスキュラックス(一般名:ベクロニウム)』、『スキサメトニウム(一般名:スキサメトニウム)』

※「中枢性」の筋弛緩薬(肩凝りにも使う方)
作用機序
: 中枢神経から発せられる異常な反射を抑えて、筋肉(骨格筋)の緊張を和らげる
主な目的 : 肩凝りや腰痛症などによる筋肉の緊張状態を和らげる
薬剤の例 『ミオナール(一般名:エペリゾン)』、『テルネリン(一般名:チザニジン)』

薬剤師としてのアドバイス:「筋弛緩薬」の名前だけで判断しない

 『ミオナール』や『テルネリン』は、肩凝りや腰痛の他に緊張型頭痛の予防・治療に使うことがあります。この時、処方される「中枢性」の筋弛緩薬のことを、医師や薬剤師はわざわざ怖い印象が強い「筋弛緩薬」とはあまり言いません。
 ところが、インターネット等で薬を調べると、分類上の「筋弛緩薬」という名前が出てきてしまうため、怖がって薬を飲まなくなってしまうことがあります。

 「筋弛緩薬」とはあくまで分類上の総称であって、「末梢性」か「中枢性」によって、作用のメカニズムや薬を使う目的、扱いの難しさも全く異なる別の薬です。名前の印象だけで薬を混同しないようにしてください。

+αの情報:肩凝りに効く『葛根湯』

 肩凝りには、漢方薬の『葛根湯』も効果があります1)。
 どうしても「筋弛緩薬」という名前に抵抗がある人は、試してみることをお勧めします。

 1) ツムラ葛根湯エキス顆粒 添付文書

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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【講義・講演等】
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