ステロイドの塗り薬を使うと、副作用で皮膚が黒く変色してしまう?
記事の内容
回答:ならない
「ステロイド」の塗り薬に、皮膚を黒くするような作用はありません。
アトピー性皮膚炎では、皮膚に強い炎症が起こること、または皮膚を何度も掻いたり擦ったりすることによって、皮膚に色素沈着が起こることがあります。そのため、「ステロイド」の塗り薬を適切に使い、炎症をしっかりと抑えることが重要です。
回答の根拠①:炎症による皮膚の着色を、副作用と間違う
アトピー性皮膚炎では、皮膚に色素沈着を起こすことがあります。これは、皮膚に炎症が起きていたことによる「炎症後色素沈着」と、痒みによって皮膚を何度も掻いたり擦ったりしたことによる「摩擦性黒皮症」が主な原因とされています1)。
1) Dermatology.229(3):174-82,(2014) PMID:25227244
これらの色素沈着は、皮膚に炎症が起きている時点から始まっていますが、皮膚が荒れている状態では肉眼で確認することができません。しかし、「ステロイド」の塗り薬によって皮膚の炎症が落ち着いてくると、それまで目立たなかった色素沈着が眼に見えるようになります。
そのため、一見すると「ステロイド」の塗り薬によって皮膚が黒っぽくなったように感じてしまうことがあります。
回答の根拠②:不適切な使用による副作用
「ステロイド」を塗ると化粧の乗りが良くなる、肌が白く見えるようになる等の理由で、強力な「ステロイド」を何年も長期間に渡って顔に塗布し続けるという誤った使い方が流行したことがあります。その結果、「ステロイド」の副作用である「皮膚が薄くなる(皮膚萎縮)」・「毛細血管が拡張する」という副作用が起こり、顔の血管が浮き出て赤黒く見えるようになってしまった、という事例が起こりました。
こうした副作用は、「ステロイド」の塗り薬を適切な強さ・量・回数・期間で使用していれば、基本的に起こることはありません。もし治療の中で一時的に副作用の兆候が現れたとしても、治療を終えて「ステロイド」を中止すれば数ヶ月以内に元に戻ることもわかっています2)。
2) J Am Acad Dermatol.20(5 Pt 1):731-5,(1989) PMID:2654214
薬剤師としてのアドバイス:皮膚が黒くなってしまうのを避けるために「ステロイド」の塗り薬で適切な治療をする
「ステロイド」を使ったら皮膚が黒くなるのではなく、むしろ「ステロイド」を使わずに皮膚の炎症を長引かせることが、皮膚の色素沈着の原因になってしまいます。
そのため、炎症が起きている際には「ステロイド」の塗り薬で適切に治療することが大切です。
「ステロイド」の塗り薬は、アトピー性皮膚炎に対して最も効果のある薬です。特に、現在使用されている薬は皮膚でだけ作用し、吸収されて全身作用しないように工夫(アンテドラッグ)された製剤で、内服薬の「ステロイド」で起こるような副作用リスクも非常に起こりにくくなっています。
ただし、塗布する部位によって厳密に使い分ける、指示された回数以上に使用しない、保湿などのケアも併せて行うことは必要です。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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