『アジルバ』と『ニューロタン』、同じARBの違いは?~降圧効果の差と使い分け
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回答:降圧効果が強力な『アジルバ』、降圧効果がやさしめの『ニューロタン』
『アジルバ(一般名:アジルサルタン)』と『ニューロタン(一般名:ロサルタン)』は、どちらも高血圧治療に用いるARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)です。
『アジルバ』は、降圧効果が強力です。
『ニューロタン』は、降圧効果がやさしめです。

そのため、血圧をしっかりと下げたい場合には『アジルバ』、低血圧を避けながら臓器保護効果を期待したい場合には『ニューロタン』を使うのが一般的です。
回答の根拠①:「アジルサルタン」の強力な降圧作用
ARBには7種の薬がありますが、どの薬にも「血圧を下げて心筋梗塞や脳卒中のリスクを下げる効果」があります1)。そのため、特に明確な使い分けの基準はなく、ガイドライン等でもARBとして”ひとくくり”で扱われています2)。
しかし、その中でも「アジルサルタン」は最も降圧効果が強力で、他のARBに比べて2~4mmHgほど大きく血圧を下げる、とされています3,4)。

そのため、「アジルサルタン」はしっかりと血圧を下げたい場合や、他のARBでは目標の血圧まで下がらない場合などに適した薬と言えます。
1) J Am Soc Hypertens.10(1):55-69,(2016) PMID:26684588
2) 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
3) Circ Rep.2(10):576-586,(2020) PMID:33693183
4) Ann Med Surg (Lond).86(2):958-967,(2023) PMID:38333313
他のARBからの切り替えで、24時間の安定した降圧効果も得られる可能性
他のARBから「アジルサルタン」に切り替えることで、血圧がより大きく下がる5)だけでなく、血圧の日内変動も小さく抑えることができる場合があります6)。
薬の数を”増やす”ことなく、同種同効薬の切り替えだけで血圧のコントロール状況を改善させる方法として、「アジルサルタン」は貴重な選択肢になります。
5) Int Heart J . 2017 Oct 21;58(5):752-761,(2017) PMID:28966324
6) J Clin Med Res.10(1):41-49,(2018) PMID:29238433
回答の根拠②:「ロサルタン」のやさしめな降圧作用
ARBの中で、「ロサルタン」の降圧作用はやさしめです7)。
そのため、あまり大きくは血圧を下げない一方、「ロサルタン」には降圧作用とは独立した腎保護効果8)が確認されており、適応症には糖尿病性腎症も含まれています10)。
つまり、「ロサルタン」は血圧を下げ過ぎることなく、低血圧のリスクを抑えながら臓器保護効果を期待する場合に適した薬と言えます。

7) J Hypertens.25(7):1327-36,(2007) PMID:17563549
8) N Engl J Med.345(12):861-9,(2001) PMID:11565518
9) ニューロタン錠 添付文書
「ロサルタン」は尿酸値も下げる
「ロサルタン」には尿酸値を下げる作用もあり10,11)、痛風発作を抑える効果も期待できます。そのため、尿酸値が高めな人の血圧コントロールにも良い選択肢になります。
逆に、「アジルサルタン」は尿酸値を上昇させる可能性がある6,11)ため、注意が必要です。

10) J Pharm Pract.33(6):874-881,(2020) PMID:31390929
11) BMJ.344:d8190,(2012) PMID:22240117
薬剤師としてのアドバイス:薬は、”ちょうど良い血圧”を維持し続けるために使う
血圧が高い状態が続くと、その圧力で血管に負担がかかるため、心臓や脳、腎臓などの臓器にダメージが蓄積し、心筋梗塞や脳卒中、腎障害といったトラブルの原因になります。そのため、食事の見直しや運動を行っても血圧が高いまま下がらない場合は、薬を使って血圧を下げる必要があります。
「アジルサルタン」や「ロサルタン」などのARBも血圧を下げる薬の1つですが、これらの薬を使う目的は”血圧を下げること”ではなく、”適切な血圧を維持して臓器を守り、心筋梗塞や脳卒中、腎障害などのトラブルを防ぐこと”です。
そのため、薬を使って血圧が下がったとしても、次はその適切な血圧を維持し続ける必要があります。

薬を飲み始めて血圧が下がっても、そこで「高血圧が治った」と思って治療を自己判断で止めてしまわないよう注意してください。
ポイントのまとめ
1. 『アジルバ(アジルサルタン)』は、降圧作用が強力で、他のARBで血圧をコントロールできないときに便利
2. 『ニューロタン(ロサルタン)』は、降圧作用がやさしめで、低血圧リスクを抑えながら臓器保護効果が欲しいときに便利
3. 降圧薬は、適切な血圧を”維持”するために使い続ける必要がある
薬のカタログスペックの比較
添付文書、インタビューフォーム、その他資料の記載内容の比較
アジルサルタン | ロサルタン | |
先発医薬品名 | アジルバ | ニューロタン |
適応症 | 高血圧症 | 高血圧症、高血圧及び尿蛋白を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症 |
用法 | 1日1回 | 1日1回 |
小児に対する保険適用 | あり | なし |
妊娠中の安全性評価 | 禁忌 | 禁忌 |
用いられている配合剤 | ザクラス配合錠 | プレミネント配合錠 |
剤型の規格 | 錠(10mg、20mg、40mg)、顆粒1% | 錠(25mg、50mg、100mg) |
先発医薬品の製造販売元 | 武田薬品工業 | オルガノン |
同成分のOTC医薬品 | (販売なし) | (販売なし) |
+αの情報①:薬をきちんと飲んでいる人ほど死ににくい
高血圧の治療は、自覚症状が何もない状態で薬を飲み続けることも多く、きちんと継続することはなかなか難しいものです。しかし、高血圧治療では、薬をきちんと飲んでいる人の方が死亡率は明確に低い(※服薬遵守率が20%高くなると、死亡率は12%も低くなる)ことがわかっています12)。
そのため、面倒臭がらずにしっかりと服薬を続けることをお勧めします。
12) Clin Cardiol.45(12):1220-1228,(2022) PMID:36116032
+αの情報②:服薬の手間を減らせる「配合剤」
高血圧の治療では、1つの薬をたくさん使うより、複数の薬を少量ずつ併用した方が、より安全かつ効果的な治療ができることがわかっています13,14)。
そのため、高血圧の人は”服用する薬の数”が多くなる傾向にありますが、そのときに役立つのが、複数の薬をまとめた「配合剤」です。
「アジルサルタン」や「ロサルタン」にもこの「配合剤」があり、服薬の手間を減らし、治療の中断や挫折を減らすのに役立っています15)。

・ザクラス配合錠(後発医薬品:ジルムロ配合錠)
→アジルサルタン+アムロジピン
・プレミネント配合錠(後発医薬品:ロサルヒド配合錠)
→ロサルタン+ヒドロクロロチアジド
13) BMJ.326(7404):1427,(2003) PMID:12829555
14) Am J Med.122(3):290-300,(2009) PMID:19272490
15) Int J Cardiol.220:668-76,(2016) PMID:27393848
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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