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似た薬の違い パーキンソン病

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『ミラペックス』と『ペルマックス』、同じパーキンソン病治療薬の違いは?~麦角系・非麦角系の差と第一選択

回答:心弁膜症の少ない『ミラペックス』などの「非麦角系」が第一選択

 『ミラペックス(一般名:プラミペキソール)』と『ペルマックス(一般名:ペルゴリド)』は、どちらもパーキンソン病の治療に使うドパミンアゴニスト(ドパミン作動薬)です。

 『ミラペックス』は、心弁膜症のリスクが少ない「非麦角系」の薬で、ドパミンアゴニストの第一選択です。
 『ペルマックス』は、副作用などで「非麦角系」の薬が使えない場合に選択肢になる「麦角系」の薬です。

 「麦角系」・「非麦角系」を問わずドパミンアゴニストでは、眠気を感じることなく突然眠ってしまう「突発的睡眠」という副作用に注意が必要です。

回答の根拠①:「ドパミンアゴニスト」の第一選択は「非麦角系」

 『ミラペックス』と『ペルマックス』は、どちらもドパミン受容体を刺激することで、パーキンソン病で不足しているドパミンを補う「ドパミンアゴニスト」です。
 若年(65歳未満)での発症など、運動合併症のリスクが高い場合に「ドパミンアゴニスト」は治療の第一選択薬になります1)が、この「ドパミンアゴニスト」には「麦角系」と「非麦角系」の2種があります。

※麦角系のドパミンアゴニスト
『パーロデル(一般名:ブロモクリプチン)』
『ペルマックス(一般名:ペルゴリド)』
『カバサール(一般名:カベルゴリン)』

※非麦角系のドパミンアゴニスト
『ドミン(一般名:タリペキソール)』
『ビ・シフロール(一般名:プラミペキソール)』
『ミラペックス(一般名:プラミペキソール)』
『レキップ(一般名:ロピニロール)』
『ニュープロ(一般名:ロチゴチン)』

 『ペルマックス』など「麦角系」の薬では、稀に心弁膜症を起こすことが報告されている2)ため、『ミラペックス』など「非麦角系」の薬が第一選択として使われています1)。

 1) 日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」
 2) Mov Disord.26(5):801-6,(2011) PMID:21671508

回答の根拠②:「麦角系」を使う状況~突発的睡眠・眠気・便秘などの副作用

 基本的に第一選択薬として使われる「非麦角系」の薬は、眠気や便秘などの副作用が起こりやすい傾向にあります。こうした副作用で日常生活に支障を来してしまうような場合には、『ペルマックス』や『カバサール』といった「麦角系」の薬を使います。
 ただしその場合、心弁膜症を防ぐために薬を使い始めてから3~6ヶ月以内に一度、さらにその後も6~12ヶ月に1回、定期的に心エコー検査や胸部X線検査を受ける必要があります1)。

突発的睡眠は、麦角系・非麦角系に共通した副作用

 「ドパミンアゴニスト」では、食事中や電話中・自動車の運転中など、通常は起こり得ない状況で、眠気を感じることもなく突然に眠ってしまう「突発的睡眠」という副作用を起こすことがあります。これは交通事故を誘発することもあり、社会生活に多大な影響を及ぼします。

 この「突発的睡眠」は、これまで『ミラペックス』や『レキップ』など「非麦角系」の薬で多いとされ、添付文書での警告も「非麦角系」の薬にしか掲載されていません3,4)。しかし、薬剤間での差は明確になっておらず、「麦角系」の薬でも同様の注意が必要とされています1)。

 ただし、薬の減量以外に、『ミラペックス』から『ペルマックス』への変更で治まった事例もある5)など、「非麦角系」でこの副作用が問題になった際は「麦角系」へ切り替えることも1つの選択肢になります。

 3) ミラペックスLA錠 添付文書
 4) ペルマックス錠 添付文書
 5) BMJ.324(7352):1483-7,(2002) PMID:12077032

薬剤師としてのアドバイス:「ドパミンアゴニスト」を使うなら、自動車運転や高所作業は避ける

 『ミラペックス』や『ペルマックス』などの「ドパミンアゴニスト」で起こる「突発的睡眠」は、年齢や性別・体重・病歴・薬の用量や服用期間、さらに薬を飲んでからの時間などに特定の傾向が見つかっていません。そのため、薬を使う全ての人が共通して注意しなければなりません。

 特に、自動車運転や高所作業などでは重大な事故に繋がった事例も報告されているため、「ドパミンアゴニスト」を服用している人はこれらの作業を避ける必要があります。
 一方、通院や買い物などの日常生活でどうしても自動車を運転する必要がある場合、自動車運転や高所作業ができないと失職してしまうような場合には別の薬(例:L-ドパ)で治療するなど、「ドパミンアゴニスト」を使わない方法が選択肢になります。

 パーキンソン病では薬を適切に続けることが重要ですが、その薬は患者の生活環境・職業や希望も踏まえて選ばなければ、治療を続けることができません。薬ごとの利益と不利益のバランスを、医師・薬剤師とよく相談するようにしてください。

ポイントのまとめ

1. 『ミラペックス』などの「非麦角系」の薬は、ドパミンアゴニストの第一選択薬
2. 『ペルマックス』などの「麦角系」の薬には、心弁膜症のリスクがあるため、「非麦角系」が使えない場合の選択肢
3. 「突発的睡眠」は麦角系・非麦角系を問わず起こるため、日常生活や職業を十分に考慮する必要がある

 

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆薬の系統
ミラペックス:非麦角系ドパミンアゴニスト
ペルマックス:麦角系ドパミンアゴニスト

◆適応症
ミラペックス:パーキンソン病
ペルマックス:パーキンソン病

◆定期的な心エコー検査に関する記述
ミラペックス:なし
ペルマックス:投与開始後3~6ヶ月以内に検査、それ以降は6~12ヶ月に1回

◆臨床試験段階での主な副作用
ミラペックス:傾眠(33.8%)、悪心(17.6%)、便秘(6.8%)
ペルマックス:悪心(17.8%)、幻覚(5.9%)、ジスキネジア(5.4%)、めまい・ふらつき(4.9%)

◆突発的睡眠に対する警告文の記載
ミラペックス:あり
ペルマックス:なし

◆剤型の種類
ミラペックス:錠(0.375mg、1.5mg)
ペルマックス:錠(50μg、250μg)

◆文献請求先
ミラペックス:日本ベーリンガーインゲルハイム
ペルマックス:協和発酵キリン

+αの情報:「非麦角系」の薬に心弁膜症のリスクは無い?

 「麦角系」の薬で起こる心弁膜症は、心臓のセロトニン5-HT2B受容体が刺激され、線維芽細胞が増殖することで起こることが示唆されています6)。また、「非麦角系」の薬では発症が0件であったことも報告されている7)ため、この線維化作用は麦角アルカロイドである「麦角系」特有のものと考えられています。

 6) Clin Neuropharmacol.29(2):80-6,(2006) PMID:16614540
 7) N Engl J Med.356(1):39-46,(2007) PMID:1720245

~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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