因果関係・相関関係・前後関係の違いは?~意図的なミスリードに騙されないために
100歳以上のお年寄りは、みんな入れ歯をしている!長生きの秘訣は入れ歯だ!みんなで入れ歯を買おう!
生贄を捧げたら雨が降ったぞ!日照りの時は次からも生贄だ!隣の村から若い娘をさらって来い!
・・・これらは、「相関関係」や「前後関係」を、「因果関係」だと勘違いしているために起こることです。
そんな勘違いするわけないだろう、と思っていても、世の中にはインチキ商品を買わせたり、不安を煽るデマを拡散させるため、これらの関係を意図的にミスリードさせる情報がたくさんあるのです。
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回答:2つの要素の間にある関係性が違う
「因果関係」・「相関関係」・「前後関係」は全て、ある2つの要素の間にはどんな関係性があるのか?ということを示す言葉です。
「因果関係」は、「猛暑だったのでエアコンがよく売れた」という時の、「気温」と「販売数」の関係です。
猛暑という「原因」によって、エアコンが売れたという「結果」が得られる、一方通行の関係です。
「相関関係」は、「身長が高い人は体重も重い」という時の、「身長」と「体重」の関係です。
身長が高い人は体重も重く、体重の重い人も身長は高い傾向にある、というお互い影響しあう関係です。
「前後関係」は、「食事を終えたら雨が降り出した」という時の、「食事」と「雨」の関係です。
特にお互い干渉することのない、時間的に連続して起こっただけの関係です。
医療や健康に関わる情報を読む際、これらを混同してしまうと、インチキ商品やデマの喧伝に引っかかってしまうことになります。
「因果関係」と「相関関係」の違い~一方通行か、お互い影響する関係か
「因果関係」は一方通行の関係、「相関関係」はお互い影響しあう関係です。
「因果関係」では、「原因」があるから「結果」が得られる、という一方通行の流れがあります。
そのため、「猛暑だったのでエアコンがよく売れた」からと言って、「エアコンをたくさん売ったら猛暑になる」わけではありません(因果の逆転)。
一方、「相関関係」ではお互いの要素が影響し合うため、双方向の関係にあります。
「身長」の高い人を集めれば、「体重」の重い人が集まる傾向にあり、逆に、「体重」の重い人を集めても、「身長」の高い人が集まる傾向にあります。
「相関関係」を「因果関係」だと勘違いするケース
入れ歯をしている人には高齢の方が多く、高齢の方には入れ歯をしている人が多い傾向にあります。
しかし、入れ歯をしたからといって、長生きできるわけではありません。
これは、「入れ歯の着用率」と「年齢」は相関関係にはあっても因果関係にはない、「入れ歯」は「長生き」という結果にはつながらないからです。
ところが、これを「100歳以上の人はみんな入れ歯をしている!今こそ長寿アイテム・入れ歯をゲットだ!」みたいな論法が、インチキ商品の宣伝にはよく使われています。
他にも、2つの要素は「相関関係」にあるだけで、原因と結果の「因果関係」にはないという例は、以下のようなものがあります。
背の高い人は体重も重い人が多いですが、体重を増やしたからといって背が高くなるわけではありません。
芸能人には美男美女が多いですが、芸能人になったからといって美男美女になれるわけではありません。
若い人はスマートホンをよく使いますが、スマートホンを使ったからといって若くなるわけではありません。
「因果関係」と「前後関係」の違い~必然なのか偶然なのか
「因果関係」は原因によって結果が引き起こされたものですが、「前後関係」に原因・結果という必然性はなく、時間経過によってたまたま立て続けに起こっただけのものも含みます。
「因果関係」では、「原因」が無ければ「結果」は起こりません。
「猛暑」だったからこそ「エアコンがよく売れた」のであって、「猛暑」でなければ「エアコンがよく売れる」という「結果」は得られません。
「前後関係」では、前の現象が無くとも後の現象は起こります。
「食事」を終えた時に偶然「雨」が降り出したとしても、それは「食事」が「雨」という現象を引き起こしたわけではありません。「食事」をしてもしなくても、雨雲があれば「雨」は降り始めます。
「前後関係」を「因果関係」だと混同するケース
「生贄」を捧げたら、その翌日から「雨」が降り始めた。
これは、単に「生贄」を捧げた翌日に偶然「雨」が降っただけ(前後関係)で、「生贄」が「雨」という結果を引き起こした(因果関係)わけではありません。
ところが、こうしたことが起こると「生贄を捧げれば雨が降るぞ!日照りが続いたら、次からも生贄が必要だ!」と勘違いしてしまう人は少なくありません。
こうした雨乞いの風習は世界各地にあったことからもわかるように、「前後関係」と「因果関係」を区別することは非常に難しいことです。
実際、今でも「前後関係」を「因果関係」を区別できず、◯◯の水を飲んだらガンが治った、△△を食べたら膝の痛みが消えた、□□の祈祷をしたら宝くじが当たった・・・だからこの水・食品・お札を買え!と言われて、インチキ商品を買ってしまう人が後を絶ちません。
医療に関する情報でも、『タミフル(一般名:オセルタミビル)』の異常行動に関する騒動や、子宮頸がんのワクチンに関する誤解・偏見については、この「前後関係」を「因果関係」だと勘違いしてしまったことが発端の1つになっています。
エビデンスレベルや統計の概念を使って、「因果関係」であることを示す
「因果関係」・「相関関係」・「前後関係」は、それぞれ似ているようで、全く異なるものです。特に医療では、これらを混同し、無意味な治療を行うようなことがあってはなりません。
そのために、エビデンスレベルや統計の概念を使います。
例えば、入れ歯にすれば長生きするのか?と考えた場合は、被験者を入れ歯にするグループと入れ歯にしないグループに分け、どちらが長生きするのかを検証する必要があります。
この時、被験者の性質がグループ間で偏っていてはいけないため、年齢や持病などが同じような人たちを集めなければなりません。
こういった偏りが少ない検証をするための考え方が、「エビデンスレベル」です。
例えば、生贄を捧げれば雨が降るのか?と考えた場合は、生贄を捧げた場合と生贄を捧げなかった場合とで、降水確率を比較する必要があります。
この時、実験で得られた降水確率の差が、単なる誤差でしかないのか、あるいは生贄によって影響された差なのか、を判定しなければなりません。
こういった実験で得られた差を判定するための考え方が、「統計」です。
医療は、夢物語を述べることはできません。そのため、断言できることが少なく、なんだか頼りなく、またどこか他人事のように聞こえてしまうことがあります。
しかし標準的な医療は、こうした長い試行錯誤の末に生まれた「エビデンスレベル」や「統計」といった考え方のもとに組み立てられたもので、現段階で最も信頼できる選択肢であることに違いはありません。
自分にとってあまりに甘美に聞こえる情報に出会った際は、一度落ち着いて「因果関係」・「相関関係」・「前後関係」について見直すことをお勧めします。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
「信頼できる情報源」
「正しい情報提供と教育」
それらは、どうやって検証、判断するのかな?
「信頼に足る=参考にするに値する情報源」とは、主に査読済みの学術論文の内容、中でもプラセボ比較のランダム化比較試験やコホート研究といった臨床試験から得られたデータや主張です。それらを吟味した上で、妥当と評価できれば根拠として扱っています。検証しようと思えば、該当の論文を読めばいつでも可能です。
こうした臨床試験がまだ無い話であれば、症例報告や動物実験、細胞レベルの研究から得られた結果からの薬学的な推論、および公的機関・専門機関の見解、ニュース報道など、現時点で得られる妥当な情報を踏まえて考えます。これに関しても、出典が明記してあれば、いつでも原典にあたって検証することができます。
主張の根拠が明示されていないものは”信頼性の検証”ができないので、情報源としては扱いません。
「正しい情報提供と教育」は、私の理念実現のための手段です。
大変参考になりました。ありがとうございました。