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似た薬の違い てんかん

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『デパケン』と『テグレトール』、同じ抗てんかん薬の違いは?~全般発作と部分発作

回答:『デパケン』は全般発作、『テグレトール』は部分発作の「第一選択薬」

 『デパケン(一般名:バルプロ酸)』と『テグレトール(一般名:カルバマゼピン)』は、どちらも「てんかん」の薬です。

 『デパケン』は、「全般発作」の「第一選択薬」です。
 『テグレトール』は、「部分発作(局在関連てんかん)」の「第一選択薬」です。
デパケンとテグレトール
 『デパケン』は、「全般発作」と「部分発作」の両方に効果がありますが、「部分発作」に対する優先度はそれほど高いわけではありません。てんかん=『デパケン』という安易な選択はできないことに注意が必要です。

回答の根拠①:「てんかん」の分類と、「第一選択薬」の違い

 「てんかん」は、脳のどこで過剰な興奮が起こっているか、によって「全般発作」と「部分発作」の2つに分類されます。『デパケン』も『テグレトール』も、この過剰な脳の神経伝達を抑えることで抗てんかん作用を発揮します。

※てんかんの分類
全般発作・・・脳全体で過剰な興奮が起こっているもの
部分発作・・・脳の一部で過剰な興奮が起こっているもの
(部分発作のことを、最近は「局在関連てんかん」と呼ぶこともあります)

 ガイドラインでは、「全般発作」の第一選択薬は『デパケン』、「部分発作」の第一選択薬は『テグレトール』とされています1)。そのため、基本的にこの分類によって使い分けます。

 1) 日本神経学会 「てんかん治療ガイドライン (2010)」

意識障害の有無で分類するわけではない

 「全般発作」と「部分発作」の違いを、意識障害があるかないかで区別する、としている情報が時々あります。
 しかし、「部分発作」には、意識障害を伴わない「単純部分発作」と、意識障害を伴う「複雑部分発作」があり、必ずしも意識障害の有無で区別できるわけではありません。

回答の根拠②:『デパケン』は「部分発作」にも使うが、優先順位は高くない

 『デパケン』は、「全般発作」と「部分発作」の両方に効果があります2)。
 そのため、てんかん=『デパケン』という安易な使い方がされていたこともありますが、現在のガイドラインでは、「部分発作」に対する『デパケン』は第4候補という扱いで、そこまで推奨度が高いわけではありません1)。
デパケン~部分発作にも効果
 2) デパケンR錠 添付文書

※新規の「部分発作」に対するガイドラインの推奨度
第一選択薬:『テグレトール(一般名:カルバマゼピン)』
第二選択薬:『アレビアチン(一般名:フェニトイン)』・『エクセグラン(一般名:ゾニサミド)』
その他、候補になる薬:『デパケン』

部分発作に『デパケン』が使われている場合は、副作用歴や併用薬に注意

 「部分発作」の「第一選択薬」である『テグレトール』は、相互作用を起こす薬が非常に多いこと3)、また皮膚障害の副作用も多いこと4)から、非常に扱いが難しい薬です。

 3) テグレトール錠 添付文書
 4) 厚生労働省 「医薬品・医療機器等安全性情報 No.290」 (2012)

 そのため、比較的副作用の少ない『デパケン』に切り替えて使っていることがあります。
 このように、「部分発作」に対して『デパケン』が使われている場合、過去に『テグレトール』による副作用や相互作用が問題になった、というケースもあるため、注意が必要です。

薬剤師としてのアドバイス:運転免許取得・妊娠など人生の節目には、専門医の受診も

 「てんかん」の治療は、年単位で長く続ける必要があります。
 そのため、日常的な診察・薬の処方は「かかりつけ」の医師にしてもらい、何か困ったことが起きた場合は専門医を紹介してもらう、といった治療が一般的です。

 特に、「てんかん」の治療薬は、2006~2016年の10年間の間に10個の新薬が承認されています(後述)。
 また、発売当初は他の薬との併用でしか使えなかった薬が、現在では単独で使えるようになっている場合もあります。

 このように、「てんかん」の治療は大きく変わりつつあります。運転免許を取得したい、結婚して子どもを産みたい、といった人生の節目には、一度専門医を受診して治療方針を軌道修正することも必要です。

ポイントのまとめ

1. 『デパケン』は「全般発作」、『テグレトール』は「部分発作」の第一選択薬
2. 『デパケン』は「全般発作」と「部分発作」の両方に効くが、「部分発作」に対する優先順位は高くない
3. 「てんかん」の薬物治療は、この10年で大きく変わりつつあるため、時には治療方針の修正も必要

添付文書、インタビューフォーム記載内容の比較

◆適応症
デパケン:各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療、躁病および躁うつ病の躁状態の治療、片頭痛発作の発症抑制
テグレトール:精神運動発作、てんかん性格及びてんかんに伴う精神障害、てんかんの痙攣発作:強直間代発作(全般痙攣発作・大発作)、躁病・躁うつ病の躁状態、統合失調症の興奮状態、三叉神経痛

◆併用禁忌の薬
デパケン:カルバペネム系の抗生物質
テグレトール:『ブイフェンド(一般名:ボリコナゾール)』、『アドシルカ(一般名:タダラフィル)』、『エジュラント(一般名:リルピビリン)』

◆併用注意の項目数
デパケン:9種
テグレトール:29種(CYP3A4に関わる薬全般)

◆妊娠中の安全性評価
デパケン:オーストラリア基準D】 (添付文書上は「原則禁忌」)
テグレトール:オーストラリア基準D】 (添付文書上は「有益性が上回る場合のみ投与」)

◆剤型の種類
デパケン:錠・R錠(100mg、200mg)、細粒(20%、40%)、シロップ
テグレトール:錠(100mg、200mg)、細粒

◆製造販売元
デパケン:協和発酵キリン
テグレトール:田辺三菱製薬

+αの情報①:葉酸欠乏に注意

 『デパケン』や『テグレトール』は、血中葉酸濃度を下げる作用があるため、葉酸欠乏症を起こすことがあります2,3)。
 葉酸欠乏は胎児にも悪影響を及ぼすため、女性がこれらの薬を服用する場合は、妊娠前の段階から0.4mg/日程度の葉酸を補充することが推奨されています5)。

 5) 日本神経学会 「てんかん治療ガイドライン(2010)」

+αの情報②:2006~2016年の10年間に新しく登場した「てんかん」の薬

 現在、「てんかん」に使われている薬は20種近くありますが、その半数近い10種が2006年以降に登場した新薬です。特に、2016年には3種の新薬が承認され、選択肢が大きく広がっています。

2006年:『ガバペン(一般名:ガバペンチン)』
2007年:『トピナ(一般名:トピラマート)』
2008年:『ラミクタール(一般名:ラモトリギン)』
2010年:『イーケプラ(一般名:レベチラセタム)』
2012年:『ディアコミット(一般名:スチリペントール)』
2013年:『イノベロン(一般名:ルフィナミド)』
2016年:『フィコンパ(一般名:ペランパネル)』
2016年:『サブリル(一般名:ビガバトリン)』
2016年:『ビムパット(一般名:ラコサミド)』

 しかし、現行のガイドラインは2010年に改訂されたもので、一部の新薬に関しては記載がありません。そのため、医師によっても判断が分かれる部分があります。

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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