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解熱鎮痛薬・NSAIDs 抗血小板薬

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『ロキソニン』や『ボルタレン』でも「アスピリン・ジレンマ」は起こる?~非可逆阻害でなければ生じない時間差

回答:起こらない

 『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』や『ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)』などのNSAIDsも、「アスピリン」と同じ解熱鎮痛薬に分類される薬ですが、「アスピリン・ジレンマ」は起こりません。

 「アスピリン・ジレンマ」は、抗血小板作用を発揮する「トロンボキサン(TXA2)」の合成阻害と、抗血小板作用を妨害する「プロスタグランジン(PGI2)」の合成阻害という、正反対の作用の優劣が入れ替わることによって起こる現象です。
トロンボキサンとプロスタグランジンの抗血小板作用

 『ロキソニン』や『ボルタレン』では、用量に関わらず「トロンボキサン(TXA2)」の合成阻害が優位に立つことがないため、抗血小板作用が発揮されることがありません。
 そのため、「アスピリン・ジレンマ」のような現象も起こりません。

回答の根拠:TXA2とPGI2の阻害効果の優劣

 『ロキソニン』や「アスピリン」などの解熱鎮痛薬は、「シクロオキシゲナーゼ(COX)」という酵素を阻害することで薬理作用を発揮します。
 このCOXは、血小板では「トロンボキサン(TXA2)」の合成に、血管内皮細胞では「プロスタグランジン(PGI2)」という物質の合成に関わっています1)。

 1) 治療学 Volume.41 Issue.12:1291-1294,(2007)

アスピリンの非可逆阻害が起こす、TXA2阻害優位の状態

 「アスピリン」は、COXを非可逆的に阻害します。そのため薬の血中濃度が下がっても、血小板や血管内皮細胞が新しく生まれ変わるまで、阻害効果が続きます。

 このとき、血小板は生まれ変わるのに7~10日かかるのに対し、血管内皮細胞は1日程度で生まれ変わります。
 この時間差によって、血小板のCOXは阻害されたままの状態なのに、血管内皮細胞は生まれ変わってCOXも復活している、というタイミングが生じます。

 これは、抗血小板作用が発揮される「トロンボキサン(TXA2)」の合成阻害だけが生じている状況です。

アスピリンジレンマ~非可逆阻害で起こる理由
 このように「トロンボキサン(TXA2)」の合成阻害効果が優位になると、抗血小板作用が発揮されることになります。

 特に、血管内皮細胞のCOXは血小板のCOXに比べて感受性が低く、少量の「アスピリン」では反応しにくいため、より「トロンボキサン(TXA2)」の阻害効果が優位の状態が強まります。

可逆阻害では、TXA2阻害が優位になるタイミングがない

 『ロキソニン』や『ボルタレン』などでは、COXを可逆的に阻害します。そのため、薬の血中濃度が下がるとCOX阻害作用もすぐに無くなります。

 つまり、血小板のCOXも血管内皮細胞のCOXも、同じように阻害され、同じように復活してくることになります。
 その結果、「アスピリン」のように「トロンボキサン(TXA2)」の合成阻害効果が優位になることはなく、抗血小板作用が発揮されることもありません。

薬剤師としてのアドバイス:低用量アスピリンで治療中は、痛み止めや風邪薬も慎重に選ぶ

 低用量アスピリンで治療中に、痛み止めとして同じ「アスピリン」製剤を使ってしまうと、高用量アスピリンになってしまい抗血小板作用が失われてしまいます

 そのため、『バイアスピリン(一般名:アスピリン)』や『バファリン(一般名:アスピリン)』などを抗血小板薬として使っている人は、痛み止めや風邪薬を選ぶ際には「アスピリン」が含まれていないものを選ぶ必要があります。

 また、NSAIDsである『ブルフェン(一般名:イブプロフェン)』を先に服用していると「アスピリン」の抗血小板作用に影響することや、『カロナール』COX-2選択的阻害薬では抗血小板作用に影響しないことなど、他の解熱鎮痛薬との相互作用を示唆する報告もあります2)。

 2) N Engl J Med.345(25):1809-17,(2001) PMID:11752357

 このことから、低用量アスピリンで治療中の人は、痛み止めや風邪薬も医師や薬剤師に相談の上で選ぶなど、より慎重な対応が必要です。

 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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