『カロナール』や『アルピニー』などの解熱剤、どのくらいの熱で使うべき?~38℃や38.5℃と言われる根拠
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回答:一般的に、38~38.5℃を越えたとき
一般的に、『カロナール』や『アルピニー』などの解熱薬は、38~38.5℃を越えた時に使用を考えます。
解熱薬は「高熱による辛さや不快感を和らげる」ための対症療法のため、熱が高くない場合や、特に高熱による辛さ・不快感がない場合には、無理に使う必要はありません。
回答の根拠:正常な「発熱」と、治療が必要な「高熱」の定義
発熱は、細菌やウイルスが感染した時に起こる、生体の防御反応です。そのため、異常な高熱にならない限り、特に体に悪いものではありません。
しかし、生卵を温かい白米の上に乗せると固まってしまうことからもわかるように、タンパク質は熱に弱い性質を持っています。ヒトの身体もタンパク質で構成されているため、あまり高熱になると悪影響が出ます。
どこからが高熱かの明確な区別はありませんが、1つの基準として、感染症法においては37.5~38.0℃は正常な「発熱」、38.0℃以上を治療が必要な「高熱」と定義されています1)。
また、熱中症などで体温が上昇した場合、脱水症などを併発していなくとも、深部体温が40℃を超えると独立した死亡因子になることが報告されています2)。そのため、概ね38.0~38.5℃くらいを目安に考えるのが一般的です。
1) 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律、及びそれに基づき医師が届出を行う感染症について
2) Intensive Care Med.36(2):272-80,(2010) PMID:19841896
熱性けいれんのある子どもは、38.0℃が1つの目安
熱性けいれんを起こしたことのある小児の場合、38.0℃以上の発熱時に解熱薬を使うことで、熱性けいれんの再発率を半分以下に減らせるという報告があります3)。このことから、熱性けいれんの既往がある小児の場合は38.0℃を1つの目安にするのが良いと考えられます。
3) Pediatrics.142(5):e20181009,(2018) PMID:30297499
薬剤師としてのアドバイス:解熱剤は、熱による辛さ・不快感の解消が目的
解熱剤の目的は、高熱による辛さや不快感を解消することです。熱を下げても根本的な治療にはなりませんので、ほんの0.2~0.3℃であっても、本人の辛さが緩和されていれば、解熱剤の目的は達せられています。
例えば38℃を越えていても、特に高熱による辛さが問題にならなければ、使わなくても問題ありません(ただし、小さな子どもや高齢者では、高熱が消耗や脱水の要因ともなるため、本人の主張ばかりを優先させるわけにはいきません)。
また、熱が上がりつつある時に解熱剤を使うと、寒気を感じてかえって不快感が増してしまうこともあります。熱が上がりきっていないタイミングでは使用はお勧めできません。
+αの情報①:インフルエンザの高熱には要注意
同じ高熱であっても、インフルエンザによる高熱の場合には、使う解熱剤には注意が必要です。
『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』や『ボルタレン(一般名:ジクロフェナク)』などの解熱鎮痛薬(NSAIDs)は、「インフルエンザ脳症」を誘発するリスクがあるため使用を避け、安全とされる『カロナール』を選ぶようにしてください4)。
4) 日本小児神経学会 「インフルエンザ脳症はどうしたら予防できますか?」
+αの情報②:解熱剤で、平熱は下がらない
平熱である36~37℃の熱と、感染などで起こる37℃以上の熱は、それぞれ異なるメカニズムで産生されています。
そのため、解熱剤を使ったからといって低体温になることはありません。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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