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糖尿病治療薬 薬の特別な使い方

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痩せ薬「マジンドール」ってどんな薬?~覚醒剤と似た依存性と耐性、個人輸入で使う危険性

回答:食欲を抑える薬

 『サノレックス(一般名:マジンドール)』は、食欲を抑え、食事量を減らす薬です。食事療法や運動療法の効果が不十分な高度の肥満症に対して、補助的に使用することがあります。

 高度な肥満症とは、肥満度+70%あるいはBMI35以上、という基準です。

 ”痩せ薬”として、インターネット等で個人輸入して使う、といった情報がたくさん出回っていますが、「マジンドール」は覚醒剤と類似の作用を持ち、依存性や耐性などの問題も多く、安易に使うべき薬ではありません
マジンドールとアンフェタミン

 必ず、医師・薬剤師など専門家の指導のもとで扱う必要があります。

 もし、ダイエット目的で個人輸入して使用しようとしている場合には、絶対にやめるようにしてください。

詳しい回答:保険適用は、肥満度+70%またはBMI35以上の肥満に限る

 『サノレックス』の保険適用は、食事療法や運動療法を実行したものの効果が不十分な、高度の肥満患者に限られています。”高度の肥満”とは、肥満度+70%またはBMI35以上のことと定義されています1)。

※肥満度、BMIの計算方法
肥満度(%)=(実体重-標準体重)/標準体重×100
BMI(Body Mass Index)=体重(kg)/身長(m)2

 1) サノレックス錠 添付文書

 つまり、まだ食事療法や運動療法を十分に実行していないケースや、ちょっと太ってしまった、といった程度の肥満には使うことができません。

 また、基本的に1ヶ月以内に効果が出なければ投与は中止し、たとえ効果があっても3ヶ月以上は薬を使うことはできません1)。更に、1回に処方できる量は14日分が上限に制限されています1)。

回答の根拠:覚醒剤と類似の薬理作用

 『サノレックス』は、主に脳の視床下部にある食欲中枢に作用し、摂食行動を抑える効果があります。この効果によって食事量を減らします。
 また、交感神経を刺激し熱産生量を上げる、消化吸収を抑える、体内に蓄えた糖の利用を促進するといった効果も持ち、体重を減少させます。
マジンドールの薬理作用

 しかしこうした作用は、そのまま副作用にもつながります。
 
 『サノレックス』の薬理作用は、覚醒剤の一種である「アンフェタミン」と類似しているため、強い薬物依存性や耐性が生じる恐れがあります。特に、海外では数週間の使用でも薬物耐性が生じることが報告されています1)。
 また、年単位の長期で連用することによって、幻覚などの症状が現れることも指摘されています1)。

 さらに、交感神経を刺激することによって血圧や脈拍、血糖値、睡眠に影響します。また、消化吸収を抑えるために消化不良を起こし、悪心・嘔吐を引き起こすこともあります。

 医師・薬剤師は、薬のこうしたメリットとデメリットを比較し、患者にとって最も良い選択は何か、ということを考えた上で薬を使います。安易にダイエットのためと個人輸入して薬を使うと、思いもよらない副作用に見舞われる恐れがあります。
 

薬剤師としてのアドバイス:個人輸入で薬を使った場合、副作用が起きても補償されない

 基本的に、医薬品で大きな副作用に見舞われた場合、「医薬品副作用被害救済制度」という補償を受けることができます。
 しかし、この補償を受けられるのは、”薬を正しく使っていた場合”に限ります。

 個人輸入で薬を使っていた場合は、この補償の対象外となります。つまり、万が一、死に至るような大きな副作用に見舞われたとしても、全て自己責任となり、一切の補償を受けることができません。

 あらゆる薬には副作用がつきものです。万が一、大きな副作用が出た場合に備え、個人輸入等で安易に薬を購入するべきではありません

 
 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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【講義・講演等】
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