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薬物動態学 相互作用

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酸解離定数「pKa」は、薬の効果に何の影響があるの?~pHと吸収率の関係

回答:消化管からの吸収に影響する

 消化管から薬が吸収される際、その有効成分は「非解離型(非イオン型)」である必要があります。
解離型と非解離型

 薬の有効成分が主に「解離型(イオン型)」になっているのか、「非解離型(非イオン型)」になっているのかは、「消化管のpH」と、「有効成分の酸解離定数pKa」によって概算することができます。

 pH > pKa のとき、薬は主に「解離型(イオン型)」のため、消化管からの吸収効率が低下します。

pH>pKaのとき

 pH < pKa のとき、薬は主に「非解離型(非イオン型)」のため、消化管からの吸収効率が上昇します。

pH<pKaのとき

 このことから、一般的に酸解離定数「pKa」が大きな薬であれば、どんな条件下でも「非解離型(非イオン型)」が多く存在することになり、安定した吸収効率を発揮することになります。

 

回答の根拠:pKaが大きいと吸収が安定する理由

 pKaの数値は、「非解離型(非イオン型)」と「解離型(イオン型)」が1:1になるときのpH、と言い替えることもできます。

 例えば、pKaが3.0の薬はpHが3.0のとき「非解離型(非イオン型)」と「解離型(イオン型)」が1:1になっています。
pKaとpHの数値

 このとき、pHが3.0より小さくなる(酸性になる)と「非解離型(非イオン型)」が増え、pHが3.0より大きくなる(アルカリ性になる)と「解離型(イオン型)」が増えます。
pKaとpH、変動したとき

 つまり、pKaが3.0の薬を効率よく吸収するためには、消化管のpHを3.0より小さく(酸性に)しておく必要があります。
 これがpKaが6.0の薬では、消化管のpHを6.0より小さい(酸性)条件にしておけば良いことになります。

 このことから、pKaが大きい薬の方が、pHが多少変動しても「非解離型(非イオン型)」の割合が多い状態を維持できる、という意味で、より吸収効率が安定している、と言えます。

詳しい回答:胃酸によってpHは変動する

 胃酸は強力な”酸”のため、胃酸分泌の多さによって消化管内のpHは変動します。特に、プロトンポンプ阻害薬(PPI)などを服用すると胃酸分泌が抑制され、消化管内のpHは大きく(アルカリ性に)なります。

 消化管内のpHが大きく(アルカリ性に)なると、薬は「解離型(イオン型)」が増え、吸収効率が低下してしまいます。この効率低下が治療効果にも大きく影響するような場合には、薬を変更するなどの対応が必要になります。

 PPIの効果にも個人差がありますが、そもそもの胃酸分泌の量にも個人差があります。こうした細かな差が様々に積み重なって、薬の効果に個人差が現れる要因になります。

+αの情報:pKaは対数値

 酸解離定数「pKa」は、pHと同じく対数の値です。そのため、数値が1違うと10倍、2違うと100倍、3違うと1000倍の差を意味しています。
 そのため、同じpHの元でpKaが3.0の薬と、pKaが6.0の薬とを比較すると、「非解離型(非イオン型)」になっている薬の割合は1:1000の差があることになります。

 薬のpKaを比較したとき、例え数値として小さな差であっても、実際には数字以上の差があることを知っておく必要があります。

薬剤師としてのアドバイス

 通常、薬の用量には幅があるため、実際に飲んでみて効果がいまひとつな場合は量を増やす、効き過ぎた場合は量を減らす、といった調整を行うことができます。

 しかし、2つの薬の吸収を比較する際には、このpKaを比べることで、”どれだけ安定した吸収”を発揮できるかどうかを比較することが可能です。

※pKaで吸収効率を比較できる薬の例(肺動脈性肺高血圧症の治療薬)
『オプスミット(一般名:マシテンタン)』 pKa 6.2
『トラクリア(一般名:ボセンタン)』 pKa 5.1
『ヴォリブリス(一般名:アンブリセンタン)』 pKa 4.0

 →『オプスミット』は吸収や組織移行性が高いことを特長として販売されています。

 
 

~注意事項~

◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。

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