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薬学コラム 時事問題

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「医薬分業」は廃止されるのか?

 国の政策として、院内薬局・・・病院内に薬局を設置する規制を緩和する動きが出ています。6月17日の朝日新聞朝刊一面でも扱われています。

 「医薬分業」について考える際、常に否定的な意見として挙がるのが「不便」ということです。確かに、病院内で薬をもらえた方が、遥かに便利です。この点について何の反論もありません。しかし、この点について、お金の動き等から利便性だけで「医薬分業」を語ることは問題である、という意見を以前に述べました。

国民が実感できるような価値を、薬局・薬剤師が十分に提供できていない

 薬は使い方を誤れば命を落とすこともあります。こうした万が一の事態に備えて、多少の不便を受け入れることは必要です。シートベルトが面倒だからしない、という人は居ないはずです。

 問題は、”薬局”という存在が、シートベルトのような価値を提供できていないことです。国民から求められてもいない、何のニーズも存在しないところでしか仕事できていないから、不要だと言われるのです。

 今のところ”薬局”は、法律で決まった制度上、仕方なく必要だから存在している、という状態です。だから、法律が変われば不要になります。

 この問題を議論する際、なぜいつも「法律を変えてはいけない」という議論になるのでしょうか。
 なぜ、「法律が変わっても必要とされるだけの価値を提供しよう」という議論にならないのでしょうか。

 病院内に薬局を建てても良い、ということになっても、「院外処方」のメリットが十分に大きければ、自然と「院外処方」のシステムが生き残るはずです。

マスコミが報道しない、医薬分業の成果

 「医薬分業」によって、医療費が削減されているという報告があります1)。この報告では、「医薬分業」が進んだ地域ほど、1日あたりの薬剤費が少ない、ということが証明されています。

 1) グローバルジャーナルオブヘルスサイエンス7月号(Vol. 6, No. 4;2014)

 しかし、こうした事実は一切報道されません。「医薬分業」にメリットがある、ということを何故、国や薬剤師会は積極的に公表しないのでしょうか。何か不都合な真実でもあるのでしょうか。

 薬剤師会に力が無いから、という意見も時折耳にしますが、大手チェーン薬局が薬剤師会に在籍していない等、薬剤師会の内部も問題だらけです。
 医療の質向上を考えている薬局経営者なのか、金儲け目当ての薬局経営者なのか、既に「医薬分業」はお金設けのゲームとして食い荒らされたような状況にありますが、次の政策も二の轍を踏むようでは、国の考えもあまりにお粗末です。

ジェネリック推進にも共通する問題~制度ありきのシステム

 「医薬分業」のように、国民のニーズから生まれたものではない”制度ありき”のシステムでは、いずれ行き詰まることを、国は理解したのではないでしょうか。

 それなのに、なぜ「後発医薬品を80%に」という、また”制度ありき”の謎理論が新たに生まれてくるのでしょうか。

 後発医薬品を推進したいのであれば、後発医薬品メーカーが素晴らしい後発医薬品を作れば良いのです。実際、飲みやすさを追求した良い後発医薬品も登場しています。こうした良い後発医薬品は、わざわざ制度で強制せずとも、シェアを伸ばしていきます。

 医師から、薬剤師から、国民から、求められてもいないのに”強制的に”後発医薬品をゴリ押しするから、質の悪いいい加減な後発医薬品まで出回って、「後発医薬品はダメだ」という感じる人が増えてしまうのです。

 ”強制的に”病院の外の薬局をゴリ押しした結果から、何か学ぶことはなかったのでしょうか。

制度はどうあれ、薬剤師が薬の専門家として、国民の医療に貢献できるように

 世の中には、国民の医療の質向上を目指して頑張っている薬剤師がたくさん居ます。日本人の主な死因に”薬害”や”副作用”が上がってこないのは、こうした薬剤師が影で活躍しているからです。

 確かに、一般的な他の職業に比べると、仕事が遅い、接客技術が下手、何のために仕事しているのかわからない等々、薬局薬剤師のレベルが全体的に低い傾向にあることは批判されて然るべきところもあります。

 今後、薬剤師という職業が本当の意味でも活躍していくためには、医療を受ける際に、制度上”強制的に”呼んでもいない薬剤師が食い込んでくる、のではなく、自分が頼りにする薬剤師を選んでその力を借りる、といったシステムになるのが理想なのではないでしょうか。

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コメント

    • Fizz-DI
    • 2016年 4月 08日

    >通りすがりさん
     コメントありがとうございます。
     「薬剤師からのサポートは過剰」、これは日々感じるところが大変大きいです。薬を飲んでいたら問題ない、という人に対して、薬剤師がアレコレとお節介を焼く必要はないと思います。が、多くの薬局薬剤師は「薬歴を書かないといけない」ために、アレコレと余計なことを聞こうとします。それが、ユーザーにとっては不愉快なのです。

     その不愉快を「薬は危ないものだから」という建前で市民に押し付けるやり方は、私も気に食わないです。確かに薬は危ないものですが、それを建前で使うから、本当に危ないことも理解してもらえません。

     少しでも、本当の意味で国民の医療・健康に役立てるよう、努力してまいります。

    • 通りすがり
    • 2016年 3月 31日

    >なぜ、「法律が変わっても必要とされるだけの価値を提供しよう」という議論にならないのでしょうか
    あなたのような薬剤師が多ければ、医薬分業が社会に良い結果をもたらし、医薬分業廃止のような議論はなかったと思います。
    基本的に多くの病院に通って、多くの薬局で薬の処方を受ける人以外では薬剤師からのサポートは過剰です。
    しかも、断ることができなく、しかも、価格が高いです。
    市民にとってのメリットではなく、薬局のメリットで作られたシステムなので、文句を言われます。
    これについて、多くを語ろうとしないマスコミが本当に最低だと思います。

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南山堂「薬局」、Medical Tribune
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大学(熊本大学/兵庫医科大学/同志社女子大学)
学会(日本医療薬学会/日本薬局学会/プライマリ・ケア連合学会/日本腎臓病薬物療法学会/日本医薬品情報学会/アプライド・セラピューティクス学会)

 

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