薬を飲んだら出始めた不調、これって副作用?~副作用だ!と思うその前に
回答:副作用かどうかの判定は難しい
客観的な副作用の因果関係の判断方法として、『Naranjo有害事象因果関係判定スケール』1)というものがあります。この判断スケールによると
①その有害事象は、これまでに副作用として報告されているか?
②その有害事象は、薬を服用した後に起きているか?
③その有害事象は、薬を中止したり、作用を打ち消す薬(拮抗薬)を使うことで治まっているか?
④その有害事象は、もう一度その薬を飲んだら現れるか?
⑤他に、同じ有害事象を起こす可能性のある要因はないか?
⑥プラセボ(効果のない偽薬)を使ったときに、同じ有害事象は現れるか?
⑦有害事象が現れたとき、血液中ではその薬が中毒域の濃度になっているか?
⑧その有害事象は、薬の量を増やすと強まり、薬の量を減らすと弱まるか?
⑨同じタイプの薬を飲んだときに、似たような有害事象が出たことがあるか?
⑩その有害事象は、血液検査や医師の診断などによって確認できているか?
といった10個の基準によって、副作用の疑いが大きいか小さいか、といった判断を行います。
1) PLoS One.6(12):e28096,(2011) PMID:22194808
薬を使っていて、何か気になる症状が現れたときには「もしかして副作用?」と疑いたくなる気持ちはわかりますが、一度副作用を疑い始めると他の要因が見えなくなってしまう恐れもあります。
薬を自己判断で中止したら症状が落ち着いたために、「やっぱり副作用だったんだ」と思い込んでいたが、きちんと調べたら全く別の病気の進行していた、といったケースもよくあります。
気になる症状が現れた際には病院や薬局で相談し、「副作用かどうか?」の判断は医師や薬剤師などの専門家に任せるのが最も良い方法です。
人によって感じ方も様々、まずは感じた通りに訴えるのが大切
世界保健機関(WHO)の定義によれば、「副作用」は「疾病の予防、診断、治療または身体的機能の修正のために人に通常用いられる量で発現する作用で、発現する有害事象」とされています。
抗ヒスタミン薬の眠気も、アレルギー治療に際しては有害な「副作用」ですが、これを利用した睡眠導入剤として使用する際には有益な効果になります。つまり、薬を飲んだ人が不調や不快といった不利益を感じるような作用のことを「副作用」と呼んでいます。
しかし、何か不調や不快な症状が現れたとき、それが本当に薬が原因で起きた「副作用」なのかどうか、を確認することは非常に難しく、絶対的な基準もありません。
副作用を調べるにあたり、薬の”添付文書”は日本で最も信頼できる情報源で、これまでに報告された副作用の症状と発生頻度も記載されていますが、ここに記載されている副作用しか起きない、というわけでもありません。
そのため、目の前の患者が何か新しい症状を訴えたとき、薬剤師はいつも『これは今飲んでいる薬の副作用ではないか?』ということを念頭に置きながら、注意深くお話を伺っています。
ですので、何か気になる症状や変化があった際には「気のせいかもしれない」などと思わず、遠慮なく医師・薬剤師へ訴えてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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