「眠れない」から飲む睡眠薬、本当に症状に合っている?~作用時間と、寝つき・中途覚醒への効果
回答:不眠の2パターンを正しく医師に伝えよう
睡眠薬には、大きくわけて2種類あります。それぞれ、不眠のタイプによって明確に使い分けます。①入眠障害(寝付きが悪い) → 作用時間が短い睡眠薬
②中途覚醒(夜中・早朝に何度も目が覚める) → 作用時間が長い睡眠薬
そのため、医師には「眠れないから薬をください」と大ざっぱに訴えるのではなく、「なかなか寝付けない」とか「夜中に何度も目が覚めてしまう」といったように、具体的に症状を伝えるようにしましょう。
また、睡眠薬にばかり頼るのではなく、生活習慣や就寝前の行動を見直すことも非常に効果的です。
回答の根拠:作用時間による睡眠薬の分類
超短時間作用型(半減期が2~4時間程度のもの)
寝付きの悪さを解消するのに適している薬です。飲むとすぐ効果が現れるので、眠れない時にだけ使うこともできます。翌朝には血中濃度が下がっているため、眠気やふらつきなどを起こすことも非常に少ない薬です。
『マイスリー(一般名:ゾルピデム)』
『ハルシオン(一般名:トリアゾラム)』
『アモバン(一般名:ゾピクロン)』
『ルネスタ(一般名:エスゾピクロン)』
短時間作用型(半減期が6~10時間程度のもの)
超短時間型と同じように、翌朝の眠気やふらつきが少ない薬ですが、ある程度作用が持続するため「中途覚醒」にも効果が期待できます。『デパス(一般名:エチゾラム)』
『リスミー(一般名:リルマザホン)』
『レンドルミン(一般名:ブロチゾラム)』
『ロラメット、エバミール(一般名:ロルメタゼパム)』
中間作用型(半減期が20~30時間程度のもの)
半減期が長いため、翌日の就寝前にもある程度の血中濃度が保たれています。4~5日続けて飲むと薬の濃度が一定に維持されるようになり、安定して睡眠しやすい状態を保つことができます。
『ユーロジン(一般名:エスタゾラム)』
『サイレース、ロヒプノール(一般名:フルニトラゼパム)』
『ベンザリン、ネルボン(一般名:ニトラゼパム)』
長時間作用型(半減期が50時間以上のもの)
夜間だけでなく、日中にも高い血中濃度を維持できます。そのため、日中に眠気やふらつきといった副作用が出ることもありますが、不安やイライラを抑える効果も期待できます。
『ドラール(一般名:クアゼパム)』
『ダルメート、ベノジール(一般名:フルラゼパム)』
薬剤師としてのアドバイス:症状は具体的に伝える
医師もエスパーではありません。「痛い」や「眠れない」とだけ伝えて全てを理解してくれるわけではありません。 薬には似たものがたくさんありますが、なんとなくお気に入りだから、などの理由で選ぶことはありません。なぜこの薬でなければならないのか、なぜ別の薬ではダメなのか、明確な理由があります。
そのため、自身の症状をできるだけ具体的に伝えることで、より症状に合った薬を処方してもらえることになります。
どう伝えたら良いのかわからない、という場合は、病院へ行く前に一度薬局に立ち寄り、自身の症状をどうやって伝えれば良いのかを薬剤師に相談することをお勧めします。
+αの情報①:長時間型の睡眠薬は、1日中眠くなるわけではない
長時間型の睡眠薬は、身体を「夜になれば睡眠できる状態」に維持する、という目的で使用します。作用時間も長いため、日中でも薬がずっと効いている状態になりますが、だからといって1日中眠い状態が続いたり、朝起きて来なくなったりするわけではありません。
+αの情報②:新しいタイプの睡眠薬
ベンゾジアゼピン系に分類されない、新しいタイプの睡眠薬も登場しています。『ロゼレム(一般名:ラメルテオン)』・・・身体の昼夜のリズムを整える
『ベルソムラ(一般名:スボレキサント)』・・・覚醒ホルモン「オレキシン」をブロックする
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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