痛み止めを使い過ぎると頭痛になる?~薬物乱用頭痛の定義
回答:「薬物乱用頭痛」になる可能性がある
『ロキソニン(一般名:ロキソプロフェン)』などのNSAIDsや、『アマージ(一般名:ナラトリプタン)』などの「トリプタン製剤」といった頓服薬を使い過ぎると、「薬物乱用頭痛(Medication Overuse Headache:MOH)」と呼ばれる頭痛を起こす恐れがあります。
特に「片頭痛」の発作に対して頓服薬を月に10回以上使っているような人は、片頭痛の予防薬を使うことも視野に入れて、一度主治医の先生と相談することをお勧めします。
回答の根拠:日本頭痛学会の提唱
日本頭痛学会によると「薬物乱用頭痛」は、以下の2つを満たす場合に該当するとされています1)。
①頭痛が1ヶ月に15日以上発症していること
②3ヶ月以上にわたって、月に10回以上のトリプタン製剤を服用している
1) 日本頭痛学会 「慢性頭痛の診療ガイドライン(2013)」
この「薬物乱用頭痛」は、薬物過剰によって痛みの閾値が下がる(小さな刺激で痛みを感じるようになる)ことが原因で起こると言われています。約70%は原因薬物の中止によって改善しますが、再発するケースも非常に多いのが特徴です。
「薬物乱用頭痛」に至る平均投与回数と期間は、以下の通りです2,3)。
トリプタン系・・・・・・1ヶ月に18回の使用で、1.7年
エルゴタミン製剤・・・・1ヶ月に37回の使用で、2.7年
NSAIDs等の鎮痛薬・・・1ヶ月に114回の使用で、4.8年
2) CNS Drugs.19(6):483-97,(2005) PMID:15962999
3) Neurology.59(7):1011-4,(2002) PMID:12370454
もしご自身が頓服薬を月に10回数以上に使っているような場合は、やや使い過ぎの傾向にあります。その場合には日頃から片頭痛の予防薬を使うことによって頓服薬の使用頻度を減らす、などの対応を考えましょう。
予防薬を使う方が、薬が大量になる?
確かに、予防薬は毎日服用する薬です。そのため、薬を飲む回数は増えることもあります。
しかし、予防薬は毎日服用する前提で作られた薬です。毎日飲んでも身体に蓄積したり、薬物過剰になることはありません。また、予防薬を服用していればそもそも頭痛が起こりにくくなります。
更に、トリプタン製剤は非常に高価ですが、予防薬は一般的に安価です。例え毎日予防薬を服用したとしても、これによって頭痛が起こらなくなり頓服の薬を使う回数を減らすことができれば、経済的に見ても節約になります。
補足情報:予防薬はこんなに安い
3割負担の場合の概算です。
・予防薬を28日間続けて服用したとき
『ミグシス(一般名:ロメリジン)』・・・・・・・・・1錠33.5円 → 1日2回服用で562円
『トリプタノール(一般名:アミトリプチリン)』・・・1錠 9.6円 → 1日1回服用で80円
・頓服のトリプタン薬を「薬物乱用性頭痛」に該当する、10回/月使用したとき
『アマージ(一般名:ナラトリプタン)』・・・・・1錠918.9円 → 2,756円
『イミグラン(一般名:スマトリプタン)』・・・・1錠816.4円 → 2,449円
『ゾーミッグ(一般名:ゾルミトリプタン)』・・・1錠960.8円 → 2,882円
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します
この記事へのコメントはありません。