薬は水で飲まないとダメ?
記事の内容
回答:敢えて水以外で飲むメリットはない
必ずしも、全ての薬が水で飲まなければならないわけではありません。
しかし、水以外のお酒やお茶、果実ジュース、牛乳などで薬を飲むと、薬の効き目に悪影響を与えてしまうような薬が、たくさんあります。
水で飲んでおけば問題ありませんので、よほど特別な事情がない限り、水で飲むことをお勧めします。
回答の根拠:水以外の飲料との飲み合わせ
水以外のもので薬を飲むことによって、効果が弱まったり、逆に強過ぎる効果が出たり、副作用が強くなったりといった悪影響が起こる可能性があります。
こうした相互作用によって健康被害を受ける恐れがあるため、薬は出来る限り水で飲むようにしてください。
薬の効果が強く出てしまう恐れのあるものの例
グレープフルーツジュースは、血圧を下げる薬のうち『Ca拮抗薬』と呼ばれる薬の効果を強めてしまいます。そのため、血圧が下がりすぎる恐れがあります1)。
これはグレープフルーツに含まれる成分「フラノクマリン」が、薬を分解する酵素の働きを妨げるため、身体の中で薬の濃度が高くなってしまうことで起こります。また、グレープフルーツ以外にもザボンやダイダイ等でも同じことが起こることが報告されています2)。
1) J Clin Invest.99(10):2545-53,(1997) PMID:9153299
2) 独立行政法人国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報
薬の副作用が強まってしまう恐れのあるものの例
『デパス(一般名:エチゾラム)』など、ベンゾジアゼピン系薬に代表される「抗不安薬」や「睡眠薬」をアルコール飲料で飲むと、知覚機能や運動機能の低下といった副作用が強まる恐れがあります。
これは、薬とアルコールのお互いの中枢抑制作用が相乗効果で強まることで起こります3)。
3) デパス錠 添付文書
薬の効果が弱まってしまう恐れのあるものの例
『フェロミア(一般名:クエン酸第一鉄)』などの貧血治療薬「鉄剤」は、お茶に含まれるタンニンによって吸収が妨げられることが知られています4)。
また、テトラサイクリン系の抗生物質である『ミノマイシン(一般名:ミノサイクリン)』は、牛乳に含まれるカルシウムによって吸収が弱まってしまいます5)。
4) フェロミア錠 添付文書
5) ミノマイシン錠 インタビューフォーム
薬の吸収に悪影響を与えてしまう例
牛乳で飲むとカプセルやコーティングが溶けてしまうものがあります。
市販の便秘薬であるコーラック等は、腸で溶けるようにコーティングしてありますが、牛乳で飲むとコーティングが剥がれて腸まで届きません。
また、熱いお茶などでは、熱さでカプセルが溶けてしまうといった可能性も考えられます。
ここに挙げたものはほんの一例でしかなく、薬によって様々な弊害が考えられます。水で飲んでおけば基本的には問題ありませんので、よほど特別な事情がないのであれば薬は水で飲むことをお勧めします。
味や飲みやすさ、生活状況から、水以外のもので薬を飲みたい場合には、薬剤師に相談すれば「何で飲めば良いか」のアドバイスをもらうこともできます。小さなお子さんでも薬を飲みやすいよう、ジュースに混ぜて飲めるような粉薬もたくさんあります。
薬剤師としてのアドバイス:急に飲み方を変えない
既に、毎日お茶やジュースで薬を飲んでいるような場合、急に飲み方を変えると薬の効き方が変わり、体調に変化が起きてしまう可能性もあります。
習慣になっている場合には急に飲み方を変えず、一度薬の飲み方について主治医や薬剤師に相談するようにしてください。
~注意事項~
◆用法用量はかかりつけの主治医・薬剤師の指示を必ずお守りください。
◆ここに記載されていることは「原則」であり、治療には各々の環境や状況により「例外」が存在します。
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